「暫定政権」として急場をしのぐには菅氏が最有力
そういう意味で、菅氏が次の総裁、つまり日本の首相に選ばれる可能性は高いと思う。昨年4月に新元号を発表した際の「令和おじさん」として知名度を高めているし、2012年12月の第2次安倍内閣発足以来、安倍政権の屋台骨を担ってきたことから、その実績と安定感は評価されている。
自民党の党則では、後任の総裁は安倍首相の残りの任期を務めることになる。つまり来年9月には再び総裁選が実施される。安倍首相の路線を踏襲する「暫定政権」として急場をしのぐには、安倍政権で経験を積んだ菅氏は最適なのだ。
ただし、沙鴎一歩はそんな形で日本の首相が決められることが私たち国民にとっていいことだとは決して思わない。国民のために心血を注いで頑張りぬく政治家に首相になってほしい。しかし、いまの政界にはそんな政治家がほとんどいない。そこが大きな問題なのだ。
読売社説は次々と賛美の言葉を贈って安倍首相を擁護する
安倍首相の退陣表明があった翌29日付で、新聞各紙は大きな1本社説で退陣を取り上げている。
読売新聞の社説の見出しは「首相退陣表明 危機対処へ政治空白を避けよ」。書き出しは「国難とも言える感染症の危機に直面している現在、政治の安定を揺るがせてはならない。政権を担う自民党は、早急に新たなリーダーを選び、混乱を回避する必要がある」だ。
この後が読売社説らしい。安倍首相に対し、次々と賛美の言葉を贈って安倍政権を擁護しているからだ。
「首相は今月24日、連続の在職日数が佐藤栄作氏を抜いて歴代最長となったばかりだ。通算の在職日数も、憲政史上最長である。2012年末の第2次内閣発足後の政権運営は、7年8カ月に及ぶ」
「長期政権の最大の功績は、不安定だった政治を立て直したことである」
「経済再生を最優先に掲げ、大胆な金融緩和や積極的な財政出動によって、景気を回復軌道に乗せた」
「緊迫する安全保障環境の中で、日米同盟を基軸として政策を見直したことも評価されよう」
「集団的自衛権の限定的な行使を容認し、安保関連法を成立させた」
「各国首脳と良好な関係を築き、国際社会で存在感を示した」
連続の在職日数や通算の在職日数が長ければ良いというのはおかしい。裏を返せば、自民党内に適任者がいなかったことになるし、政権を奪えない野党のだらしなさも指摘できる。要は日本の政治がどん詰まり状態になっているのだ。この状態を打開しない限り、日本の将来はない。