9月半ばには国会で新しい首相が正式に選出される

自民党総裁の安倍晋三首相(65)が8月28日夕方、首相官邸の記者会見で持病の潰瘍性大腸炎の悪化を理由に辞任することを表明した。自民党は9月15日までに後任の総裁を選出する。

記者会見を終え、引き揚げる安倍晋三首相(左)。右は菅義偉官房長官=2020年8月28日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者会見を終え、引き揚げる安倍晋三首相(左)。右は菅義偉官房長官=2020年8月28日午後、首相官邸

自民党の党則で定められた総裁公選規程によると、総裁選挙は国会議員による投票(395票)と、全国の党員などによる党員投票(394票)の合計788票で争われる。

しかし、今回のような任期途中の辞任など緊急の場合には、党員投票を省くことができる。その場合は党大会に代わる両院議員総会で、国会議員と都道府県連の各代表3人が投票を行い、過半数を得た候補が総裁となる。具体的には1人1票を持つ国会議員票の394票と、47都道府県連の141票(3票×47)の計535票で決まる。

選出方法は二階俊博幹事長に一任され、9月1日の党総務会で正式決定する。いまは党員投票が省略されるかどうかが焦点になっている。いずれにしろ、9月半ばには国会で新しい首相が正式に選出される。

この次期首相の選出において、一般の国民は蚊帳の外に置かれている。「次期首相(内閣総理大臣)=自民党総裁」となることから、あくまでも自民党の党内事情で決まってしまうのだ。

自分たちを当選させてくれる人物を「選挙の顔」に選びたい

後任の自民党総裁には、党政調会長の岸田文雄氏(63)や官房長官の菅義偉氏(71)が出馬の意向を固め、党元幹事長の石破茂氏(63)も強い意欲を示していると報じられている。

それではどんな力学で総裁が決まるのか。それは次の「選挙の顔」としてふさわしいかどうかだ。いまの衆院議員の任期は来年10月で切れる。それまでには解散・総選挙が実施される。自分たちを当選させてくれる人物を「選挙の顔」として、できるだけ自分の選挙戦を有利に展開したい。大半の議員はそう考えている。「安倍1強」において、自民党の国会議員が安倍首相にすり寄っていたのも、そうすることが当選につながるからだ。

つまり総裁をだれに決めるかは、国会議員の「党利党略」に左右されるのである。国民のことを考えて選ばれるわけではないのだ。これが現実である。