「首相周辺の官僚」の政策責任を問うのは転倒していないか

安倍政権を擁護することが多い読売社説も、コロナ対応のまずさについてはきちんと言及している。「アベノマスク」「GoToキャンペーン」の問題を取りあげ、さらに長期政権ゆえの問題点も指摘している。

「安定して長期政権を担ってきたという自負が、気持ちの緩みにつながった面も否めまい」

読売社説は権力を批判する目を失ってはいない。これでこそ新聞の社説である。ただ、気になったのは次の書き方である。

「官邸主導の政治は、迅速な政策決定を可能にする一方で、首相に近い官僚の意向が反映されやすい。国民の不安の声が、首相に届いていなかったのではないか」

沙鴎一歩は批判を受けた政策に対する責任が「首相周辺の官僚にある」というニュアンスには賛成できない。国の政策における最高責任者は、安倍首相だからである。

読売社説は総裁選に関し、「感染症の抑止に社会全体で取り組むには、政治に対する国民の信頼が不可欠だ。総裁選を通じて、危機を克服するための政策論争を深めてもらいたい。総裁候補は、コロナ後を見据えた社会や経済の青写真を示すべきである」とも書くが、これには賛成である。

「日本の民主主義を立て直す一歩」とまで書く朝日社説

次に朝日新聞の社説。読売社説とはたびたび主張が対立しており、特に安倍政権を鋭く批判することで知られる。その朝日社説の書き出しはこうである。

「首相在任7年8カ月、『安倍1強』と言われた長期政権の突然の幕切れである。この間、深く傷つけられた日本の民主主義を立て直す一歩としなければならない」

手厳しさに驚かされる。書き出しぐらい、安倍首相に対し「ご苦労さまでした」と労をねぎらってもいいのではないかと思う。見出しも「最長政権 突然の幕へ 『安倍政治』の弊害 清算の時」と酷評そのものである。少々怖くもなる。

朝日社説はこれまで批判し続けてきた「おごり」と「緩み」を取り上げる。

「退陣の直接の理由は、わずか1年で政権投げ出しと批判された第1次政権の時と同じ持病である。しかし、長期政権のおごりや緩みから、政治的にも、政策的にも行き詰まり、民心が離れつつあったのも事実である」

「民心が離れつつあった」と断定するが、その前に持病を持ち出すのはアンフェアではないだろうか。