「24歳までに結婚を」と必死に合コンを繰り返す
福岡県福岡市で厳格な両親に育てられたという木村さん。バブル景気を眺めて育った彼女は、「将来結婚したら専業主婦になることは当たり前だと思っていた」という。しかし、都内の短大を卒業する頃には就職氷河期に突入し、国文学科を卒業した木村さんの就活は困難を極めた。
「6歳上の姉が話していた就活とは様子が違い、困惑しました。文系の短大卒では面接にこぎ着けることすら難しかった。でも、母親から『就活は婚活。職場で結婚相手を選び専業主婦になるべし』と教育されていたので、なりふり構わず教授に取り入り、必死で就活しました」
希望する一部上場企業への就職は叶わなかったが、なんとか彼女は「丸の内OL」になる。
彼女が就職した1995年当時には、女性の結婚適齢期を指す「クリスマスケーキ」という言葉があった。24歳までに売れないとダメ、25歳になると売れ残りという意味だ。
「売れ残りの“ケーキ”になるまいと必死に合コンを繰り返しました。そして23歳の頃、5歳年上の男性と出会いました。のちの夫です。顔も学歴もまあまあいいし、中堅家電メーカーの正社員で福利厚生も充実している。この人なら私を幸せにしてくれると思い、必死でアプローチしました。交際から1年後、夜景を見ながらキスをした後、彼がひざまずいてプロポーズしてくれました。トレンディドラマのようなシチュエーションに興奮したのを覚えています」
人もうらやむハワイ挙式で勝ち組主婦に
友人・親戚を大勢招き、ハワイであげた挙式を「人生でいちばん幸せな日でした」と振り返り、微笑む。東京・中央区にマンションを借りると、当時の年収800万円代だったバブル世代の夫とともに、外車、高級腕時計を購入するなど、貯蓄よりも消費を優先した暮らしぶりを満喫。友人から「セレブ主婦」と揶揄されたが、木村さんは気にも留めなかった。ほどなくして第一子を妊娠すると、物欲はさらに加速していく。
「結婚後は、夫の希望もあり家庭に入ることにしました。同期OLたちの『結婚おめでとう』という寄せ書きを見ては優越感に浸っていました。今思えば、あのとき退職せず、会社員を続けていればよかった……」
2005年につくばエクスプレスが開業すると、夫は茨城県守谷市にある沿線の街へ引っ越しを決める。リーマン・ショックが起きるすこし前のことだった。