【三戸】ISTは、衛星コンステレーションを狙わないんですか。
【堀江】狙います。僕らのロケットの構想を進めてくれたJAXAの野田篤司さんという人がいてね。野田さんは本当に先進的な考えを持っていて、何年も前から超々小型衛星のフォーメーションフライトというコンセプトに取り組んでいます。それを一緒にできたらいいなと。JAXAは日本の税金でつくられているから、日本企業に対して優先的に供与するはずです。
【三戸】フォーメーションフライトって何ですか。
超々小型衛星を何百基って一緒に宇宙に打ち上げる
【堀江】カプセル玩具ってあるじゃん。カプセルに小さなおもちゃが入っている。あのサイズぐらいの超々小型衛星を何百基って一緒に宇宙に打ち上げるんです。小さな一基には、それぞれアンテナ装置と電磁石が入っていて、宇宙に行くと電磁石で自律的に距離を取って、アンテナのような形に広がっていく。
【三戸】傘みたいな感じ?
【堀江】傘は面が埋まっていますけど、これは点で広がります。電波は、その電波の波長の半分以下の距離ならキャッチできます。たとえば波長1メートルの電波をキャッチしようと思ったら、50センチ以下の距離を取りながら1000基の衛星を並べたら、超巨大なアンテナを作れるわけ。
【三戸】これができると、何ができるようになるんですか。
【堀江】ブロードバンド通信の容量は、「電力×地上局の大きさ×宇宙局の大きさ」で決まるんですよ。宇宙局が超巨大な半径1キロのアンテナだったとしたら、結構な容量のブロードバンド通信ができる。その研究開発を、今JAXAの野田さんがやっています。
【稲川】いろいろ課題はあって、もちろん簡単にはできないのですが、技術的に不可能ではない。ISTとしても、ぜひ組みたい。
【堀江】超々小型衛星1000基ならおそらく100キロくらいで、それなら、うちのロケットで打ち上げられます。それをいくつも打ち上げていけば、世界中でブロードバンド通信ができる。しかも、スペースXのスターリンクより、ぜんぜん安くできる。安くて大容量のデータ通信ができたら、スペースXにも勝てますよ。
さらに、それで終わりじゃないんです。アンテナを地上に向けたら通信ビジネスの話になりますが、最後はこれを宇宙に向けますから。同じ仕組みで、半径数キロの超巨大望遠鏡を宇宙に送って、隣の恒星系に向けるとどうなるか。
【三戸】ひょっとしたら宇宙人が見えるかもしれない?