航空株「投げ売り」で大損失

バフェット氏は今年2月の段階ではデルタ株を買い増している。当時、テレビ番組のキャスターからの「航空株は売らないのか?」という質問には「航空株には未来がある」「航空株は売らない」と答えていた。しかし、3月以後もコロナ危機が悪化する中、バフェット氏は結局4社の航空株を「投げ売り」したのである。

バフェット氏は航空株に80億ドル程度を投資していたが、これらの株式を売却して戻ってきた資金はその半分以下。まさに投げ売りだった

この判断により、バフェット氏の評判には大きな傷がついた。「バフェット氏でも間違う」ことがこれだけ明確になった例はほかにないだろう。

バフェット氏としては、名声よりも実をとったのだろう。航空株を保有し、さらに損失が膨らむリスクを回避することを決めた。だがこの「戦略的撤退」は、結果をみれば底値売りになっており、いまとなっては正しかったとは判断できない

バフェット式投資法の落日

バフェット氏の今回の金鉱株への投資についてももう一度考えてみたい。

バフェット氏はこれまで、金投資の効用について完全否定していたことはすでに述べたとおりである。しかし、バフェット氏がそのようは発言をしていた2001年以降の金価格とS&P500を比較すると、驚くべき結果が出ている。

S&P500は米国の主要500社の株価指数であり、バフェット氏は「どの銘柄に投資すればわからなければ、S&P500に投資すればよい」と公言するほど、米国の主要企業が含まれていることはご存じの通りである。

さて、そのS&P500の株価指数は2001年から現時点で約2.5倍に上昇しているが、金価格は同期間でなんと7.5倍になっている。つまり、バフェット氏が最も好む配当と金利収入を捨てて、金に投資していれば、S&P500への投資の3倍ものリターンが出ているのである。これが「事実」なのである。