ゼロリスクを笑う人が「ゼロリスクおじさん」になる危険性
この落語のすごいのは、「小言幸兵衛」を笑いながらも「極端すぎることを前提にして妄想するととんでもないことになるよ」と、観客側にも戒めている点です。「相手を揶揄して笑っている人間にもブーメランとして戻す差配が落語にある」と考えるのは買いかぶりすぎでしょうか。
落語はあくまでも大昔のフィクションの世界を物語る芸能ではありますが、だからこそ時代を超えて、誰にも当てはまる普遍的な人間の愚かしさが描かれているのです。
誰もが「ゼロリスクおじさん・おばさん」になってしまう可能性はあります。だからこそゼロリスク思考に陥っている人を否定し、糾弾して、排除するのではなく、「ああ、もしかしたら、あの人たちは自分の身代わりでそういう立場になっているのかもなあ」と一瞬でも思ってみることで、自らのゼロリスク化を防ぐことができるのではないでしょうか。
落語を聞くとそんな心持ちに、つまりは、「優しく」なれるはずです。
まさに落語は心のストレッチであります。