「寿限無」の一節を痛感した
新型コロナウイルス感染予防の外出自粛ムードは、われわれ落語家のみならず、外食産業、つまりは「オール接客業」に暗い影を落とし続けたままであります。持続化給付金などは確かに支給されはしましたが、ほとんどが税金として再吸収されるありさまでした。いやはや落語と講演で生活している私は、収入8割減という憂き目を食らっています。
しかし、「仕事が飛んだのは私だけではない」という奇妙な連帯感が下支えとなる形で、この災禍を「彩果の宝石」(埼玉の銘菓)とばかりに前向きにとらえます。さらには災禍を他の落語家との「差異化」の機会と捉え、初小説が『PHP 2020年11月増刊号』(9月18日発売号)より連載されることになりました。ある意味コロナのおかげではあります。
さて、そのように軸足を作家方面に移しつつもやはり落語家目線で、冷静になって今後のアフターコロナの推移を予想してみます。
まず、今回の騒動で、落語家や芸人、役者、歌手になろうとする人はおおむね減少するのではないでしょうか? そしてこれとは対照的に「やはり公務員が一番よ」と田舎の結婚の世話焼きおばさんのような考え方が一層強まってゆくことが想像されます。地味でも手堅い仕事がやはりいざというときは強いものです。
自然の影響をもろに食らってしまう大変さはありますが、第一次産業の底力も痛感しました。古典落語の「寿限無」の一節ではありませんが、「食う寝るところに住むところ」という、「食品および建築・不動産関係」の不況下での堅牢さは株価の変動を見ても明らかです。