一度は排外主義、ヘイト色を薄めるが…
その際には、自らが40代以前に行っていた在特会や日本第一党でのヘイト履歴を「行き過ぎであった部分もあった」などと反省しつつ、内側には激しい妄想的排外主義を潜伏させている。ヒトラーが1933年1月に首相となったとき、ナチ党からの入閣者はゲーリングをはじめわずか数人であった。ヒトラー内閣は中道保守のドイツ中央党と連立を組んだ連立政権で、首相よりも強い権限がある大統領が上位に存在した。誰しもがヒトラー内閣は早期に瓦解すると思ったが実際は違った。ヒトラーは親衛隊を使った白色テロを起こし、共産党とユダヤ人という仮想敵を作り、わずか約2カ月後の1933年3月、全権委任法が成立してドイツのほとんどすべてを掌握した。
しかしこのヒトラー内閣の蛮勇は、ワイマール共和国の構造的欠陥や国際情勢によってもたらされた「快進撃」であり、流石に未来の日本に於いて同様の事態は起こりえないであろう。桜井首相は「自らによる過去の排外的言動」を反省しつつ、自由と民主主義を基調とする力強い日本、などと喧伝してヘイト色、排外主義色を見かけ上大幅に減退させるポージングを採る。しかし内閣が発足して初めての国政選挙(参議院選挙等)で自党が勝利すると、徐々にだが確実に内面に秘めたヘイト色をむき出しにして、2~3年もすれば在特会や日本第一党の主張に回帰するだろう。
安倍総理という現実の延長といえる
このような世界線は万が一にもあり得ないことであって単なる妄想に過ぎないが、よく考えるとこの妄想は当初雑誌『正論』や『WiLL』を愛読する「ホシュ」おじさんに過ぎなかった安倍晋三氏が、総理大臣になって長期政権になると、徐々にその地金をむき出しにして『Hanada』にまで登場するという現実の世界線の拡張版であると言えなくもない。
いや実のところまさしく目下の現実を目一杯拡張させたのがこの世界線である。恐ろしいのは、現実でも桜井氏の得票は東京における区議会議員であれば当選ラインにいるという事で、「桜井区議」の誕生は、選挙のタイミングさえ合致すればすぐにでも実現するのである。今般東京都知事選挙での桜井氏の得票は、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が東京都知事選挙に出馬した2013年の「保守層」の約60万票(その後逮捕・起訴)のうち、「反安倍」「妄想的排外主義」までの極論に走るこのうち3割のちょうど18万を集約したに過ぎないが、このレベルでも選挙区さえ選ばなければすぐにでも東京都区議になれるのである、という暗澹たる現実から目を背けるべきではない。
よって私たちは厳に警戒と監視を怠ってはならないのである。ヘイトや陰謀論や妄想的排外主義は無視して消滅するのを待つ、という従来の進歩派の対応では最早生ぬるくまるで効果が無い。それが萌芽した瞬間に逐一叩き潰さなければならない。