話はズレたけれど、トヨタの創業期、豊田喜一郎は採用した大学卒業者にたったひとつの言葉を繰り返し教え、身体に叩き込んだ。これもカイゼンのひとつだ。

「いいか、お前たちは机の前で勉強することに慣れている。しかし、車を作るのは勉強じゃない。考えることだ。現場へ行け。車にさわれ、温度を肌で感じるんだ。機械も触れ。油で手を汚せ。そうして、一日に10回、手を洗え」

豊田喜一郎はカイゼンのヒントは机上にはないと言っている。カイゼンは現場で考えることだと強調している。

人間だって「カイゼン」が必要だ

スマホやパソコンを使っていると、画面に「アップデートします」とか「ソフトウェアを更新します」「バージョンアップします」という表示が出てくる。

野地秩嘉『トヨタに学ぶ カイゼンのヒント71』(新潮新書)

ああ、そんなものかと何も考えずにアップデートが終わるのを待つのが一般の人々だろう。アップデートが必要なのは、スマホやパソコンは完成された機械ではないからだ。未完成な機械だから、不完全な状態をアップデートし、つねに性能をアップさせている。

一方、冷蔵庫とか洗濯機とか掃除機は買った時点で性能は完成されている。アップデートはできない。性能を向上させた製品、あるいは新しい機能の製品を手に入れるならば、まるごと買うしかない。

思うに、人間だって完成された機械ではない。

子どもから大人になるまで自発的に、もしくは知らず知らずのうちにアップデートして性能を上げていっている。アップデートしない人間は子どものままだ。だから、人間も知識や経験をアップデートさせていかなくてはならない。

そうしてスマホやパソコンでさえアップデートしているのだから、人間はさらにアップデートしなくてはならない。

カイゼンとはつまり、アップデートのことであり、やらないままでいたら、人間は「古い機械」になってしまう。

スマホの場合に起こる3つの問題

では、もし、人間がアップデートしないまま生活していたらどうなるのか。PCやスマホについて検索したら、「アップデートしないまま使用していると、主に3つの問題が出てきます」と書いてあった。

要約すると、次のようになる。

①セキュリティが弱くなる
新しいウイルスはつねに生まれている。OSを最新の状態にしないと、ウイルスに感染するリスクが高まる。
②バグや細かい不具合が修正されない
OSやアプリには特定の条件ではフリーズしたり強制終了されるといった不具合がつきもの。バグや不具合を修正しないと、画面が動かなくなったりして不便だ。
③最新の機能が使えない
最新の機能が使えないままスマホやアプリを使っていると、昔のガラケーを使っているのと同じ。