つまり運動してすぐに脂肪が燃えるというわけではないのだ。また、腹筋をしたからといっておなかの脂肪が燃焼するということもなく、脂肪燃焼はあくまで全身的に起こってくるという。
どこかの部分の脂肪を減らすということは不可能
「運動でどこかの部分の脂肪を減らすということは不可能に近いのです。それでは運動や体を動かすメリットは何かというと、“糖を効率よく使える体”になるということ。年を取り、運動する習慣がないと、糖をうまく取り込めない、つまりは血糖値の下がりにくい状態になってしまうのです。余った糖は脂肪に変わり、やがてメタボや中年太りにつながります」(吉木医師)
「体を動かす」とは、「血中の糖を消費する」こと。こまめに動くことで余分な糖を少しずつ消費でき、その習慣を続けていくと、「糖を消費しやすい体(=基礎代謝が高まった状態)」になるというわけだ。血糖を取り込む働きとしてインスリンが知られるが、年とともにこの働きが誰しも自然に悪くなり、基礎代謝が低下しやすくなる。
基礎代謝とは呼吸や体温維持、臓器の働きなど生命活動を維持するために、じっとしていても消費されるエネルギーのこと。この基礎代謝量と日中の活動や飲食の消化などで消費するエネルギー(活動量)を合わせたものが「エネルギー消費量」だ。食べ物からの摂取エネルギー(カロリー)が、エネルギー消費量を上回れば「太る」ことになる。健康検定協会理事長で、管理栄養士の望月理恵子氏が説明する。
「日々余ったカロリーが積み重なって、およそ7000キロカロリーで体重が1キロ増と考えられています。体重60キロの男性の場合、一日の基礎代謝量の推定値は20代で1440キロカロリー、50代になると1290キロカロリーになります。その150キロカロリーの差が“余分”ということ。この場合、7000キロカロリーに達する(体重が1キロ増える)のは、単純計算で47日です」
反対に7000キロカロリーを1カ月で落とすには、一日あたり7000÷30(日)=約230キロカロリーを減らせばいい。「ごはん1膳(普通盛り)、肉まん1個、ドーナツ1個分、ビール500ミリリットルなどが230キロカロリーに相当します」と望月氏。
しかしここで「カロリー」だけに目を奪われないように気をつけたい。
なんとカロリーが高くなくても、糖を取りすぎることで血糖値が急上昇し、脂肪に変えて蓄えられる(太る)仕組みが私たちの体にはあるのだという。再び吉木医師の話。
「肉を食べると肉がつく、と考える人が多いようです。しかし、肉(脂肪)に変わるのは肉よりも圧倒的に甘いもの、つまり糖です」
糖に気をつけるというと、近年の流行であった「糖質制限」の影響からか、「主食を削らなければ」と思う人が多いようだ。だが糖は糖でも、主食(炭水化物)に含まれる糖よりも、ジュースや菓子、加工食品に含まれる添加糖(ブドウ糖果糖液糖、スクラロース、異性化糖など)のほうがよほど危ないと知っておきたい。