沖田×華ばっかさんや小島慶子さん、また経済評論家の勝間和代さんなど、発達障害をカミングアウトする女性が増えています。それが発達障害の理解を世間に促す力になっていることは確かです。

しかし現実には、「打ち明けても理解してもらえないかもしれない」、「仕事を続けられないかもしれない」と心配に思う気持ちは、多くの当事者が抱えています。残念ながら、その不安が的中することもあると思います。

いまだに、発達障害に苦しんでいる人を前にして、「サボっているのでは」、「努力が足りない」、「そんな病気があるわけない」といった差別や偏見の言葉を口にする人もいます。

多くがカミングアウトしない道を選んでいる

カミングアウトしたことで退職に追い込まれたケースもあります。異動だけならともかく、「辞めろ」と言われたら死活問題です。また退職にならないまでも、障害者雇用への切り替えを強く求められた例も見られました。

現実には、多くの発達障害の当事者が、カミングアウトしないという道を選んでいます。時折、問題が起きることがあったとしても、業務がある程度こなせているなら、会社から問題視されることもありません。

仕事においては、本人が自分の特性を理解して、問題となる状況にうまく対応策を考えていくことが何よりも重要です。ADHDにおいては、薬物療法により良い効果が見られることも少なくありません。

反面、幸いにも従業員どうしでサポートし合う文化が浸透している職場なら、周囲の理解と協力を得るために、カミングアウトする道はあると思います。業務内容を配慮してくれたり、場合によっては、得意な部署に異動をする選択肢を提示されたりするかもしれません。

ときには、職場の人に連れられて専門外来にやってくる人もいます。診察で得た情報は患者の個人情報ですから職場の人にすべてを話すことはありませんが、本人の了解を得た上で、「こんなところに気をつけてください」と情報を共有することもあります。

こうした点は、会社によって大きく異なっています。一般的には、IT関係の大企業は比較的理解が進んでいる印象があります。

障害者雇用という選択肢も

最初から発達障害の特性を理解してもらえる環境で働きたい場合には、障害者雇用という選択肢があります。

一般雇用の場合、配属や転勤などにおいて、どうしても他の従業員と同じように扱われます。職種の選択の幅は広いものがあり、努力次第で昇進も可能ですが、個人の特性や希望を配慮してもらえる範囲は狭くなります。

一方、障害者雇用においては、多くの場合、職種の幅は軽作業や事務の補助などに限られており、待遇にも制限がありますが、周囲の人に特性を理解してもらえる利点があります。障害者雇用に対する理解や考え方は、企業によってかなりの濃淡がありますが、今後より拡充していくものと考えられます。