遊びほど脳を活性化させる行動はほかにない

遊びはくだらない、という考え方は、大人になるとさらに強く刷り込まれる。あまりにも多くの会社が、遊びを殺してしまっている。「わが社は遊びと創造性を重視しています」とアピールする会社もあるが、たいていは口だけだ。本当に遊び心に満ちた職場を実現できている会社は、めったにない。

当然と言えば当然だ。現代のような形の会社は、もともと産業革命から生まれた。大量生産による効率の向上こそが存在意義だった。当時のマネジャーたちは軍隊を見習い、厳格な管理法を取り入れた(「営業部隊」など、軍隊を起源とする言葉がよく使われるのはそのせいだ)。産業革命が終わって久しい現代でも、大半の会社がその考え方や行動規範を捨てられずにいる。

遊びは、それ自体を目的とした行動だ。何かのためでなく、遊びたいから遊ぶ。凧あげ、歌、ボール投げ。どこにもたどり着かない行動は、一見無駄なようにも思える。しかし実は、そうした遊びこそ、人間にとって不可欠な行動なのだ。

精神科医でナショナル・インスティテュート・フォー・プレイの創設者であるスチュアート・ブラウンは、6000人を対象に遊びと成長の調査をおこない、遊びが人間のさまざまな面に良い影響を及ぼすという結論を得た。遊ぶと体が健康になり、人間関係が改善され、頭が良くなり、イノベーションが起こしやすくなる。

「遊びは脳の柔軟性と順応性を高め、創造的にしてくれます」と彼は言う。「遊びほど脳を奮い立たせる行動はほかにありません」

精神は遊びを求めている

遊びは、生きるために不可欠なものだ。

最近の研究によると、動物は遊びを通じて主要な認知スキルを発達させているらしい。

実際、遊びが種の生存を左右することもあるほどだ。

15年間にわたってハイイログマの生態を研究しているボブ・フェイガンは、よく遊ぶ熊ほど長生きすることを発見した。彼はこう説明する。

「世界はたえず変化し、未知の課題や不確実な状況を突きつけます。遊びはそうした変化への対応力を育むのです」

神経科学者のジャーク・パンクセップも、同様の意見を述べている。

「たしかに言えるのは、遊んでいるときの動物たちがきわめて柔軟で創造的な行動をとるということだ」

動物のなかでも、ヒトという種はとりわけ遊びが好きだ、と先述のスチュアート・ブラウンは言う。人間は遊ぶ生き物であり、遊びを通じて生き方を身につけるのだ。

遊んでいるとき、私たちはもっとも純粋な形で人間らしさを発揮し、自分らしさをさらけ出す。最高の思い出や、「生きている」という実感をもたらしてくれるのは、遊んでいる時間だ。遊びは発想を豊かにしてくれる。新たなアイデアが生まれ、古いアイデアが新たな命を得る。好奇心が刺激され、未知のものを知りたいという意欲がわいてくる。

遊びがエッセンシャル思考(少ない時間とエネルギーで最大の成果を出すための考え方)に不可欠なのは、次の3つの点で役立つからだ。