人間ドックはケースバイケース

サラリーマンの方になじみのある予防行為といえば、人間ドックだろう。人間ドックの費用そのものは、医療費控除には該当しないのだが、その人間ドックを受けたことで病気が見つかり、治療することになったという場合は、ひも付きで人間ドックの費用も医療費控除に含めてよいと規定されている。

医療費控除は、治療のほか、療養についても該当する。療養の中には介護も含まれる。介護に関する費用には、人的役務の対価の他、おむつがある。一定の要件を満たしていることが必要ではあるが、おむつは消耗品だけれども医療費控除の対象となっているのだ。

市販の消耗品に関しては、セルフメディケーション税制で該当する医薬品の購入費用について認められることになった。今後、特定の疾病を確実に予防できる特殊なマスクが開発されれば、そのマスクの購入費用は医療費控除に該当するという時代がくるかもしれない。

さて、治療とは、何をもって治療と呼ぶのだろうか。

治療(読み)ちりょう(英語表記)(medical)treatment;healing
[名](スル)《「ぢりょう」とも》病気やけがをなおすこと。病気や症状を治癒あるいは軽快させるための医療行為。療治。「歯を治療する」

デジタル大辞泉の解説】より引用


医療行為
医師法により、医師および医師の指示を受けた看護師・助産師などの医療従事者のみ行うことが認められている治療や処置などのこと。医学的な技術・判断がなければ人体に危害を及ぼす危険がある行為の総称。
[補説]医療行為の定義は必ずしも明確ではなく、血圧測定・経管栄養注入・たんの吸引などを医療行為とみなすかどうか意見が分かれている。経管栄養注入などの日常の医療的ケアは、現在では家族も行うことが認められている。気管挿入は、かつては医師しか行えなかったが、現在は救急救命士も行うことが認められている。

デジタル大辞泉の解説】より引用

民間療法で病気が治った場合はどうなるか

ひらたくいうと、治療とは、医師の資格を持った人が行うものということになる。よって、原則、医師の資格を持たない人が行うものは、医療費控除には該当しない。

「どこの病院に行っても治らなかったけれど、この道場に行ったら治ったんです」

筆者が国税で勤務していた頃、医療機関に行ったけれども治らず、民間療法で病気が治ったという人が多大な量の領収書を添付して医療費控除の申告書を提出して来られることがあった。

けれども、国税当局としては、

「国家資格をお持ちの方に発行してもらった領収書を、医療費控除とさせていただきます」

と説明するしかなかった。なぜなら、国税の職員は医療の専門家ではないからだ。