「半地下の臭いだよ」、臭いが住民に染み付く
低家賃のアパートである「半地下」とは、その名の通り、地上と地下の中間の「半地下」に建てられた貧困層用の住居です。ソウルでは家賃高騰が続いていますが、半地下は月々の家賃は約54万ウォン(約5万円)。この安さから、住む場所として選択する人が多いのです。その住環境は外から家の中が丸見えの部屋もあり、プライバシーが守られにくくなっています。また、洪水の際には家の中が泥水であふれ、非常に不衛生でカビが発生しやすい環境です。最近は、洪水の対策を取られた家も目にすることができます。
ただ、半地下には独特の「臭い」がある。映画の中では、その臭いが住民に染み付き、見た目や言葉を誤魔化しても、消えない「臭い」となることが表現されています。この「臭い」は、近隣の高層マンション群の高所得者との埋められない「格差」を浮き彫りにしています。
韓国の若者の失業率は世界で最も深刻
半地下の例は、ソウルの一例ですが、韓国の格差を表している一つの側面でしょう。2018年度のOECDのデータによると韓国の若年層の失業率が、OECDクラブの中で、最も深刻なレベルになっています。韓国統計庁によると、2018年の全体の失業率は3.8%であるのに対し、若年失業率(15~29歳)は9.5%と2.5倍です。
定職を持たないフリーター、就職浪人、ニートなど実質的な失業者を含めると失業率はさらに高くなります。このような、定職を持たない若者を含めると広い意味での失業率は、15~29歳において20%を超えています。若者の5人に1人が実質的な失業者ということになります。
なぜ、韓国は若年層の失業率が高いのか。一般的な要因は、韓国は大学の進学率が高く、さらに徴兵制によって若者の社会進出が遅くなる傾向があります。その上、韓国では、労働組合の影響力が非常に強いという経済構造があります。今回のように、新型コロナなどの外部要因によって、雇用環境が悪化すると、労働組合は、今、企業で働いている人の権利・雇用を守るように主張します。そうなれば、企業は新規採用の余裕はなくなります。