大手新聞政治部次長の最期

私が知っていた人間の2つの不倫報道について書いてみたい。1つは、だいぶ昔になるが、大手新聞の政治部次長でMという人がいた。私よりだいぶ上だったが気のいい人で、酒がめっぽう好きだった。

政治家にも顔の広い人で、何人もの政治家を紹介してもらったり、政界の裏話をレクチャーしてもらったりしていた。美人の奥さんとも何度か会った。

そのMから電話が来た。「文春にオレの話が載るが、何とかならないか」というのだ。詳しい話はしない。仕方なく、知り合いの文春の編集者に電話したが、「無理」だと断られた。

発売された文春を見ると、Mが某新興宗教の教祖の娘と不倫しているというのである。記事中には、小さいが2人がベッドで寝ている写真も添えられていた。記事を読む限り、女性の夫が部屋に忍び込んで撮ったもののようだ。

発売後にMに会った。新聞社を辞めるという。記事だけならともかく写真まで載ったのでは会社に迷惑がかかるというのだ。

しばらくしてMは離婚して個人事務所を持ち、評論家活動を始めた。順調のように見えたが、会社勤めではないので、朝から酒を飲みだした。どれぐらいたった頃だっただろう。Mが倒れて病院へ救急車で運ばれたと聞いた。肝臓が壊死していて、手の施しようがなかったという。悲しい別れだった。

政治部長ならともかく、次長クラスの不倫をなぜ? そう思わずにはいられなかった。

記者からニュース番組へ転身したが……

2つ目のケースは、これも大新聞の記者で、そこで出している週刊誌の編集部にいたときに知り合った。面白い人間で、記者にしては物言いもはっきりして豪快だった。その新聞系列のテレビ局の夜のニュース番組から、キャスターにと声がかかった。私も聞いた時、適材だと思った。すると、歯に衣着せぬコメントと人懐こいキャラクターで一躍人気者になったのである。

だがこれもやはり文春だった。彼と8年間不倫をしていた元代議士秘書が、「私と○○愛欲8年」を告白したのだ。

出会うきっかけから、彼の妻に知られてしまったこと、ニュース番組に出て傲慢になったことなどを縷々るる述べて、SEXのことまで微に入り細をうがちしゃべり、その中にバナナの話まで入れたのだ。バナナがどのように使われたのかはご想像に任せるが、発売と同時に彼は「バナナの君」というニックネームがついてしまったのである。

彼の苦悩は想像を絶するものがあっただろう。ニュース番組からは降り、自ら望んで東北の支社に異動した。

だが不屈の闘志を持った男だった。そこで地道に取材を重ねて成果を上げた。しばらくして会ったときは、ヒゲもじゃで誰だか分からなかった。

2つの不倫ケースを、私が編集長の時は忘れたことがなかった。不倫報道を否定しているのではない。今回の渡部建のケースは、私が編集長でも迷わず載せた。