写真=筆者撮影
英国で幅広い店舗網を持つHSBCの支店の例(ロンドン市内)

うち、HSBCは元々の正式名称を「香港上海匯豐銀行(Hong Kong and Shanghai Banking Corp.)」といい、アヘン戦争後の1865年、今も実在する英船舶運航大手P&Oの香港支社長でスコットランド人のトーマス・サザーランドによって創立されている。もともと香港を拠点に主な営業活動を行っているが、英国でトップクラスの店舗ネットワークを持つ他、米国にも一般顧客向けのリテール銀行を運営している。

同盟5カ国は香港市民の受け入れを協議中

こうしたHSBCの不穏な動きに対し、冒頭で述べたようにポンペオ米国務長官が非難の声明を上げたわけだ。香港の一般市民の多くは「HSBCに裏切られた」と感じていた中、同長官の発言は大いに歓迎されている。英国の証券アナリストらの間で「中国による国家安全法の制定で、香港から資本が逃げる」との危惧が叫ばれているが、これを一矢報いた格好となっているとも言える。

同長官の発言から見るに、米国がついに親中派の瓦解に向け介入してきたとの見方もできよう。英米両国を含む機密情報に関する同盟「ファイブ・アイズ」の国々が親中派支配層らの私権にも踏み込んでくるかどうかも今後の注目点かもしれない。

親中派支配層の中には、ファイブ・アイズ諸国の国籍を持つ者も混ざっているとみられる。彼らは、米英などの国々に自社の資産なり自身の財産なりを持ち出したり、肉親を分散させて住まわせたりしている。

「ファイブ・アイズ」とは本来の名を諜報協定UKUSAといい、英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国から成る。これらの国々は、香港への「国家安全法」の適用により、香港市民の中から「政治難民」が出る事態が生じた場合に備え、受け入れに関する今後の対応をすでに協議中と伝えられている。これらの国々の「本気度」も試されている。