国民は「またか」と思ったに違いない
平時ならばおそらく、こうした役所と民間企業のつながりも表には出ることがなかったに違いない。また、表に出たとしてもそれほど大きなスキャンダルにはならなかっただろう。農水省の官民ファンドで投資に失敗して回収不能になりながら、関係する役員に多額の退職金を支払っていた問題など、国民から見れば許されない事件だったが、批判の声はさほど大きくならなかった。
ところが今回の問題は、安倍晋三首相が新型コロナ対策として打ち出した目玉政策の一つである「持続化給付金」を巡る問題。経営危機に直面している国民からすれば、そこで「お手盛り」がなされていたとなれば、怒りは収まらない。しかも、巨額の委託費が払われている。もちろん、これは国民の税金だ。
安倍首相が打ち出した「アベノマスク」も表明から2カ月たっても届かないところが少なくないうえ、委託した業者の選定などでも不透明さが指摘されてきた。持続化給付金の問題が出て、ほとんどの国民は「またか」と思ったに違いない。
森友学園問題、加計学園問題、財務省の文書改ざん、桜を見る会、そして黒川弘務・東京高検検事長(5月に辞任)の定年延長問題など、癒着や忖度などが疑われる不透明な政策決定について、国民はホトホト呆れかえっている。「政府への信頼のなさ」が、今回の業務委託問題への怒りを増幅しているとみていい。
情報開示を渋れば、政治不信はますます強まる
役所が民間に業務委託する場合は、競争入札など公平な選定プロセスが義務付けられている。だが、実際には、実施までのスピードが求められたり、特定の事業者しかできない業務というのも存在する。国民に納得してもらうには、徹底した情報開示を行うことが不可欠だろう。今回の持続化給付金の問題でも国会で追及されると「企業秘密」を盾に情報開示を拒むケースが少なくない。
それでも追及されると渋々、情報を出す。出せるものなら初めから出せば疑念は生じないが、政治家も「渋る」ことで国会対策、つまり時間稼ぎに使うことが少なくない。結局そうした対応がさらに不信感を増幅する悪循環になっている。
協議会と電通の会見も「ツッコミどころ満載」という声もあり、今後も不審点の追及が続くことになりそうだ。そうなれば、政府への不信感が高まり、そうでなくても急低下している内閣支持率をさらに引き下げることになりかねない。