ファストリ「韓国事業を強化しても収益が悪化」
ファーストリテイリングは、韓国で2005年にユニクロ事業を開始し、2018年にはGU事業も開始した。同社は中国に並ぶ重要市場として韓国事業の強化に取り組んできた。しかし、昨年後半以降、韓国における同社の収益環境は悪化している。
その背景となった要因の1つが、日韓関係の悪化だ。
2017年の大統領選挙で当選した文在寅氏は「反日」と「南北統一」を二枚看板に掲げている。文大統領は、過去、日韓両国の政府が“最終的かつ不可逆的”に合意した請求権問題などに関する協定を反故にした。軍事転用が可能なフッ化水素などの輸出を適切に審査しているか、文政権の輸出管理体制にも疑義が出始めた。
昨年7月、わが国は韓国の輸出管理体制に不安があると判断し、韓国に対するフッ化水素など特定品目の輸出管理の運用を見直した。さらに、政府は輸出管理を簡略化する“優遇対象国”から韓国を除外し、個別審査制に戻した。それらは、国際社会の安定を維持するために必要な措置であり、各国からも相応の理解を得た。
文在寅の支持率維持に不可欠な反日政策
わが国の対応は韓国向け輸出に対して新しい規制を設けるという意味での規制強化ではない。なお、EUは韓国を輸出優遇国として扱っていない。
文政権は日本が対韓輸出規制を強化し、元徴用工の賠償問題などへの報復を行っていると一方的に批判を展開した。その主張が韓国世論の反日感情を燃え立たせた。韓国ではわが国企業の製品への不買運動などが激化した。
その結果、ファーストリテイリングが注力してきた韓国事業は不買運動に直撃され、収益が大きく減少した。わが国のスポーツウェア、ビール、自動車など多くの企業においても韓国事業の収益が悪化した。
本年4月の総選挙において文大統領は勝利し、同政権は反日・南北統一の姿勢を引き続き重視している。現在、元慰安婦支援団体に関する疑惑が浮上してはいるものの、文政権の対日姿勢に大きな変化は見られない。