国家ぐるみで進める「21世紀版全体主義」

マーティン・ファクラー『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(光文社)

18年4月、中国政府に属する国家新聞出版広電総局が、ByteDance(バイトダンス)という国内の会社にショートムービーの共有サービスTikTok(ティックトック)を閉鎖するよう命令した。TikTokはアメリカや日本でも若者を中心に人気があり、中国では「内涵段子」(Neihan Duanzi)という名前のアプリが使われている。そうした人気アプリも政府が全部検閲をかけていて、下手をすると潰されてしまうのだ。

バイトダンスのようなプラットフォーム運営会社というのは、スマートフォンはじめモバイル端末を活用した新しいビジネスを生み出し、中国国外にもSNSやアプリの普及を目指す。いかにも今の新興企業特有の展開をしているが、その裏では旧ソビエト連邦や毛沢東時代の中国と同じ検閲が粛々と行なわれている。言論の自由や表現の自由は認められない。文化大革命時代の残滓と、21世紀的なITベンチャーの両方が混在しているのは興味深い。中国は今、「21世紀版全体主義」を国家を挙げて進めているのだ。

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