使用が許されないワードは「10万個」

シフトは交替制で途切れなく組まれ、ネット上は常に監視されている。問題がある書きこみを見つけたときには、アプリやソーシャル・メディアを運営しているアリババ(Alibaba=阿里巴巴)やテンセント(Tencent=騰訊)といった会社に通報する。通報を受けた運営会社は、1時間以内に削除しなければならない。削除が遅れて書きこみが野放しにされると、当局から処罰を受ける。

Beyondsoftはデータベースを作って運営している。同社のウェブサイトによると、使用が許されないNGワードは10万個もある。さらに別の300万個の言葉について、「もしかしたら変な意味があるかもしれない」と目を光らせている。たとえば「クマさん」とか「クマ」だ。単に動物のクマを指しているだけかもしれないが、使い方によっては先に触れたような政治的意味をもたせることもできる。疑いの目をもって、あやしい言葉を見つけ次第、要注意リストのデータベースに加えているのだ。ポルノや売春、ギャンブルやナイフ(武器)に関連する投稿もチェックされる。

さすがに人間の目でこれだけ膨大な情報をすべてチェックすることはできない。だから、コンピュータソフトやAIを駆使して、キーワードやシンボル、問題になりそうな画像や動画を探していく。

セレブ生活を送る元首相の娘もNGワード

中国では毎日8億人もの人々がインターネットを使っている。日々とてつもない数の投稿がなされ、膨大な情報が流れるため、検閲の仕事に終わりはない。

彼らは中国国内のみならず、海外で中国共産党を批判しているサイトも常にチェックする。中国政府にとって都合の悪いキーワードをどんどんピックアップして、リストに加えていく。

たとえば中国の元首相である李鵬(Li Peng)の娘・李小琳(Li Xiaolin)の名前は、当局に批判的な海外のサイトで頻繁に登場する。実業家である彼女は、ド派手なファッションに身を包んで贅沢三昧の生活を送り、やりたい放題に浪費していることで有名だ。

海外で彼女の名前が批判的な文脈で使用されていることがわかると、中国国内でも「李小琳」とか“Li Xiaolin”といった固有名詞を検索していく。その名前と一緒に出てくるイメージやシンボル、写真や画像も細かくチェックする。彼らはそうやって着々と作業を進めていくのだ。