ささやかな花道を用意してあげようではないか

全国大会がなくなり、球児たちには寂しい夏になるが、この際、「高校野球の取り組み」を考え直してもいいと思う。

例えば、球児たちに夏の甲子園(地区予選)以外に真剣勝負できる舞台を設定するのはどうだろうか。愛知県の中京大中京高校と大府高校の野球部は、夏の地区予選でベンチ入りできなかった3年生による親善試合を、2000年から実施している。このように夢に届かなかった選手たちに“花道”を用意する企画を、他の学校でも採用できないだろうか。

写真=iStock.com/MasaoTaira
※写真はイメージです

高校野球は負けたら終わりのトーナメント。出場する半数の学校が1回戦で姿を消すことになる。ベンチ入りできたとしても、一度も公式戦に出ることなく終わってしまう球児は少なくない。これは「教育」の観点から考えても、修正の余地があるといえる。

多くの選手に出場チャンスを与えるという意味では、各地区大会が終わった(敗退した)タイミングで、地元代表(優勝)を除く学校でいくつかのグループをつくり、リーグ戦を行ってもいい。そこに3年生を出場させるのだ。この「花道大会」の回数を重ねていけば、認知度が上がり、地元を盛り上げるローカルイベントとなる可能性もあると思う。

甲子園という大きな目標ではなく、もっと身近な目標を与えることで、弱小校の選手たちも輝くことができ、引退後に部活動を振り返ったときに一定の満足感と自己肯定感を味わえるに違いない。

高校野球の“特別”を生かしていないのが大問題

高校スポーツには、「都大路」(駅伝)、「花園」(ラグビー)、「選手権」(サッカー)、「ウインターカップ」(バスケ)、「春高」(バレー)のように通称で呼ばれるような高校生憧れの大会がある。しかし、甲子園の人気は別格で、高校野球は“特別”だという雰囲気がある。

スタンドには野球部員以外の生徒が授業を休んでまで応援に来ている学校もある。応援団やチアリーダー、吹奏楽部などの応援も華やかだ。他の運動部の大会とは大きく異なる。

令和元年度の状況になるが、高体連の加盟登録者数は約119万人。一方、高野連の登録部員数(硬式)は約14万人。人数はインターハイのほうが多いが、中止報道は甲子園のほうが圧倒的に多かった。