出典:2020年3月期決算短信

今期、ソフトバンクグループで認識された評価損益の内訳を具体的にみてみます。株式売却による利益がプラス583億円、未実現評価損益(未売却の株式から生じる時価と取得金額の差額)がマイナス1兆9176億円。主に運用コストに当たるその他の収益・費用でマイナス719億円となっています。すなわち、まだ売却していない株式の含み損失約2兆円が、今回の営業赤字の主原因です。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドとは何か

SVFは2017年5月に設立された運用額10兆円超規模の巨大ファンドであり、AI技術を持つ有望スタートアップに投資を行っています。これまでに、米国シェアオフィス大手のWeWorkや米国ライドシェア大手のウーバー・テクノロジーズなどに投資を行っており、2020年3月末時点では88社に投資を行っています。

SVFはいわゆるベンチャーキャピタル(VC)事業です。VCのビジネスモデルは、急成長が見込める非上場のスタートアップ企業へリスクマネーを供給する代わりに、高いリターンを要求するハイリスク・ハイリターン型の投資であり、投資期間は一般的に10年以内です。従って、もともとリスクが高い投資のため、損失が大きいことは当然であるものの、今回の損失認識は運用期間に鑑みると早すぎると言えます。

なぜ、一般的な投資から売却までの運用期間である5~7年が経過する前に、これほど巨額の損失を認識することになったのか。それは、ソフトバンクグループが適用する会計基準に理由があります。