消しサカには、将棋の要素が多分にあるという。

「どの選手でボールを運んでいくかとか、自分や相手の2手、3手先を読めるかが大事なんです」

もちろん、自分の戦略を正確に実現するための技術や、それぞれの消しゴム選手固有の動きを把握することも欠かせない。

写真撮影=筆者
ユーティリティー選手の「ファイヤバドン」(写真左、ザ☆ウルトラマンに登場)。大柄で、土屋はもっぱらディフェンダーとして使用していたが、お笑い第七世代「四千頭身」の後藤拓実によって、フォワードとしての才能を見出された。ワールドカップ・アメリカ大会でイタリア代表の司令塔として活躍した「バッジョ」(写真右)。大会が開催された1994年に、16歳だった土屋が板消しゴムからカッターで削り出して作成したもの。実際のバッジョの面影はまったくないが、土屋がそう名づけたのだから誰がなんと言おうとバッジョ。スルーパスを自在に繰り出す一方、アクロバティックなシュートも得意とする。

「テクニックはもう、場数で鍛えるしかないですね。1日6時間はやらないと(笑)。繰り返し練習していくうち、自分のお気に入り選手ができて、どこをどう打てばそのお気に入り選手やボールがどう飛ぶかがわかってくるんです。選手ごとに得意なショットや動きがあるので、使い分けることでいろいろな戦略も立てられる。そこまで行ったら絶対、消しサカにハマりますから」

「レベルの高い、本格的な大会を開きたい」

昨年8月には、ナイツがパーソナリティーを務めるニッポン放送『ラジオビバリー昼ズ』とTBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』のリスナーに呼びかけて参加者を募り、『第1回消しゴムサッカー大会 つちやのぶゆき杯2019』を開催。

観戦のみを希望した番組リスナーや相方の塙、サンドウィッチマンらといった芸人も見守る中、全16人の参加者の頂点に立ったウィナーは、優勝者特典のエキジビションマッチで創始者の土屋と対戦した。

「僕のプレーでドリブル(サイコロと消しゴムが離れずにほぼ同じ距離を前進する)とかができた時、観客から『おーっ』って声が上がったんです。その瞬間、僕は絶頂を迎えてましたね(笑)。これをずっと夢見ながら一人でやってたんだよな、と」

ちなみに、同大会で初めて消しサカの試合をじっくり観戦した塙の感想は、

「悔しいけどおもしろい」

だったとか。

今の土屋は、WEFA会長として二つの野望を持っている。ひとつは、レベルの高いプレーヤーたちによる本格的な大会を、イベントとして行うことだ。

「出場者は芸人でも一般の方でもいいんですが、ライブハウスみたいなところでちゃんと客入れして、試合の様子は会場内の大モニターに映すような感じでやれれば。本当にレベルが高くてテンポのいい試合ができたら、プレーヤーはもちろん、見ても楽しめるコンテンツだと思うんですよ。もちろん最後は優勝者と僕とのガチな王者決定戦で締めたいんですが、そこまでのレベルのプレーヤーに早く登場してほしいですね」

「メッシの目に留まれば」動画はスペイン語の字幕付き

そしてもうひとつは、自身のYouTubeチャンネル『つちやのぶゆき 世界消しサカ協会』が一日も早く“バズる”ことだ。とはいっても、目先の広告収入をさもしく期待しているからではない。

「大勢の人に見てもらえたら、世界中の人が消しサカをやり始めて各国でリーグ戦ができてくるってイメージでチャンネルを始めたんですけど、今のところまったくそんな動きはないですね。古坂大魔王さんの『PPAP』が、ジャスティン・ビーバーが紹介してから世界的なブームになったじゃないですか。だから僕も、億単位のSNSフォロワーを抱えてるメッシ(バルセロナ)あたりの目に留まったらすごいことになると思って、以前のスーパープレー動画にスマホアプリで翻訳したスペイン語や英語の字幕をつけてアップしてるんですが、まるで効果なし(笑)」