「総理大臣として当然責任がある」と述べた安倍首相
さらに朝日社説は指摘する。
「世論の批判をうけて法案の今国会成立は見送りが決まり、続けて混迷の『出発点』となった黒川氏が職を辞す。内閣の政治責任は極めて重い」
「1月の閣議決定をさかのぼって取り消し、検察庁法改正案は撤回する。事態の収拾にはこの二つと経緯の説明が不可欠だ」
沙鴎一歩も、改正案は継続審議を止めて廃案にすべきだと思う。
最後に朝日社説はこう主張する。
「首相はきのう、黒川氏の定年を延長したことについて、『総理大臣として当然責任がある』と記者団に述べた。問われているのはその責任の取り方だ。これまでのように口先だけで済ませるわけにはいかない」
安倍首相はこの朝日社説の主張を真摯に受け止めて、これまでの口先だけの国会答弁と記者会見を深く反省し、私たち国民のための政治に力を尽くすべきである。
産経新聞は取材源を守り抜くことができるのか
産経社説はその中盤で「新聞記者も同様である」と指摘し、新聞倫理を取り上げる。
「12年に制定された新聞倫理綱領は、すべての新聞人に『自らを厳しく律し、品格を重んじなくてはならない』と求めている」
12年とは平成12年、つまり西暦2000年のことだ。産経新聞はいまだに元号を使い続けている珍しい新聞だ。そして「自律」と「品格」。新聞倫理綱領が示すように新聞記者にはどんな場面でも公器にふさわしい振る舞いが求められる。だからこそ今回の「賭けマージャン」は本当に残念だ。
産経社説は書く。
「取材過程に不適切な行為があれば、社内規定にのっとり、厳正に処分する。取材のためと称する、不正や不当な手段は決して許されない」
「ただし、取材源秘匿の原則は守る。取材源、情報源の秘匿は報道に従事する者が、どんな犠牲を払おうと、堅持しなくてはならない鉄則である。報道の側からこれを破ることはあってはならない。取材相手との接触の詳細は、秘匿の対象にあたる。鉄則が守られなくては、将来にわたって情報提供者の信用を失うことになる」
なるほど主張は素晴らしい。しかし、前述したように産経新聞は情報が外部に漏れている。「産経新聞関係者」が週刊誌にみずから情報を漏らしているのだ。それで取材源を守り抜くことができるのだろうか。今後、謙虚に検証を行い、その結果を紙面で公表しなければ、読者は逃げていくだろう。
ところで黒川氏は大の賭けマージャン好きだという。そう言われるぐらいだから、黒川氏と賭けマージジャンをしていた記者は、今回の産経や朝日以外の社にもいるはずだ。記者たちはいつ自分が週刊誌に書かれるか、不安にさいなまれているのではないだろうか。