IT先端技術で感染リスクを“見える化”できる
今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、IT先端技術が経済や社会の運営にかなり重要な役割を果たすことが明確に示された。まず、感染対策において、情報通信技術は重要な効果を発揮している。そう考える背景の1つとして、IT先端技術を用いることで感染のリスクを“見える化”できることがある。
当たり前だが、ウイルスは目に見えない。特に、今回の新型コロナウイルスに関しては、無症状の感染者が増えた。そのため、各国がソーシャルディスタンスを徹底したにもかかわらず、急速に感染者が出てしまった。また、わたしたちの記憶には限りがある。聞き取り調査などをもとに感染経路を解明することは容易ではない。
この問題に対応するために、中国では生鮮市場などに入る人が検温と同時に自らのデータを示すQRコードを提示し、それを担当者が管理することによって個々人の感染リスクが管理された。また、中国では、IT大手アリババグループなどが移動データなどをもとにユーザーの感染リスクを客観的に示すアプリを開発した。
3月上旬の時点で、200以上の都市がこのアプリを導入したと報じられている。中にはこのアプリによって自らが健康であることを示さなければ職場に復帰できないケースもあると聞く。
自己隔離を求めたイスラエルの動き
韓国やイスラエルはスマートフォンなどの位置データをもとに人と人の接触を追跡し、感染のリスクを抑えた。その結果として、韓国が一時、感染拡大を食い止めたことは見逃せない事実だ。イスラエルでは、データをもとに感染者との接触が疑われる人を特定し、自己隔離を求めた。
ワクチンなどが開発段階にある中、政府は人の移動を制限するなどし、何としても命を守らなければならない。そのために個人のデータを用いた感染経路の把握と感染リスクの遮断は重要だ。
同時に、個人データの取得と管理には細心の注意が求められる。個人データを用いた感染対策を行うために各国政府が責任をもってプライバシーを守る体制を整備しなければならないことは言うまでもない。