リアルな経済活動を飲み込むネット空間

次に、コロナショックは経済活動を支える上でデジタル技術が不可欠であり、その重要性が高まっていることを世界に示した。

端的に言えば、これまでオフィスをはじめとするリアルな空間で展開されてきたビジネスが、急速にネット上のデジタル空間に吸収され始めている。それによって、コロナショックを境に、人々の生き方や企業のビジネスモデルが変化している。

象徴的な例がテレワークだ。テレワークが浸透するとともに、世界中で働き方が大きく変わり始めた。多くの企業がテレワークによって業務を継続している。国内外の顧客との交渉なども、ZoomやWebExなどのビデオ会議システムを用いて行われている。それにより、オフィスに出勤しなくても仕事ができることに多くの人が気づいた。

同時に、口頭ではなく、文書としてロジカルに業務上の課題や今後の成長戦略を提案するなど、個人の力の重要性も高まっている。

テレワークを進めるためには、ITプラットフォームが必要だ。ITプラットフォームの構築では米国のGAFAや中国のBATHがしのぎを削っている。また、テレワークの実施には、パソコンやタブレット端末といったハードウエアの確保も欠かせない。パソコン市場では中国のレノボと米国のHP、デルのシェアが高い。

テレワーク普及で不動産価格に影響が出ることも

世界全体でデータ通信量が急速に増え、高機能サーバーへの需要も押し上げられた。この分野では、米国のデル、米中合弁企業であるH3Cテクノロジーズ、中国のインスパーなどのシェアが高い。

情報セキュリティー管理の徹底も不可欠だ。デジタル空間で契約を交わす、または法定書面に署名を行うなどのために、電子契約プラットフォームの開発も米中のIT企業を中心に進んでいる。

こうした変化は、世界の経済活動、資産の価格にかなりの影響をもたらす。米国ではIT企業が多いナスダック総合指数の動向に注目が集まっている。テレワークが普及すれば、オフィスビルへの需要は低下し、不動産価格には相応の影響が出る可能性がある。

一方、観光需要の消滅に直面した旅館やホテルなどがテレワーク向けのサービス提供に注力するなど、ビジネスモデルも大きく変化している。