期待値を上げるだけ上げて、価格の正当性を問う

実はホストも、テレビショッピングとよく似た「売り方」をしています。

固定の指名客と仲良くなってきたところで、「このシャンパンを入れてくれたらもっと仲良くなれる」「入れてくれたら一緒にディズニーランドにいこうか」「ディズニーシーでお酒を飲むのも楽しいかもしれないね」「なんならミラコスタに泊まろうか」と、シャンパンを入れてくれた後の楽しい未来をお客さまにイメージさせます。

するとお客さまは「シャンパンを入れたら、こんなに楽しい未来がある」と思い描き、その未来をつかもうと、シャンパンを入れてしまうのです。

一歩間違えば詐欺師同然ですが、実際に「シャンパンを入れてくれたら一緒にディズニーランドにいく」「ミラコスタに泊まる」という約束を守るのであれば、立派な取引です。

「ストーリー」を語り、期待値を上げるだけ上げて、「価格」が適正かどうかお客さまに判断してもらう。これは怪しいようで、実は「堂々とした売り方」なのです。

「ネガティブ面」を事前に説明すると何がいいのか

また、商品やサービスの「ネガティブ面」を伝えるタイミングにも注意が必要です。

ある靴を売るとします。

その靴はおしゃれですが、耐水性が低い。快適に履き続けてもらうには、別売りの防水スプレーを使ってもらうしかありません。

この事実を「どのタイミングで伝えるか」で、お客さまの反応は180度変わります。

言うまでもなく、ベストなタイミングは「お客さまがその靴を買おうかどうか悩んでいるとき」です。「こんなネガティブ面がありますが、お客さまによくお似合いです。いかがですか?」と尋ねれば、お客さまは「なんて誠実な接客なんだ」と感じることでしょう。

ところが多くの販売員は、目の前の靴を売りたいがために、この「逆」をやってしまいます。お客さまに「お似合いですよ」と勧め、購入を決めた後にようやく、「でもこの靴、実は耐水性が低くて……」とネガティブ面を話し始めるのです。

たとえ「耐水性が低かろうが何だろうが、買う」と決めているお客さまであっても、心のどこかに「先に言ってくれよ」という引っかかりが芽生えることでしょう。まるでこの販売員が、耐水性が低いというネガティブ面を隠していたかのような気持ちになるからです。