いま注目の報告書「再開へのロードマップ」とは

たとえばドイツ。5月4日には公園の閉鎖が解かれ、博物館も開いた。この緩和に先立ち、4月20日には飲食店や雑貨店などが営業を再開していた。ただし、買い物の際や交通機関での移動時には、マスクの着用が義務化された。

ドイツでは3月中旬に出された外出制限に対し、国民の不満が高まり、抗議デモが続いていた。首都ベルリンでは5月1日、外出制限に対する抗議のデモに1000人以上が参加したほか、ベルリン以外の都市でも抗議デモが起きた。

中国・武漢市のロックダウンも4月8日に2カ月半ぶりに解除され、大勢の市民が商店街や公園に集まる様子が日本のニュース番組でも取り上げられている。

欧米では規制解除に向けた具体的提言が出されている。いま注目されているのが、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)が発表した報告書「再開へのロードマップ」である。取りまとめたのは米食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブ氏だ。

規制解除に向けた道のりを「4つの時期」に整理

ここでは規制解除に向けた道のりを、以下の4つの時期に分けている。

①感染の拡大を遅らせる時期
②地域ごとに経済を再開させる時期
③多くの人が自然に抵抗力を持ったり、ワクチンによって免疫を獲得したりして集団免疫が成立して規制を撤廃できる時期
④次の未知のウイルスによるパンデミック(世界的流行)に備える時期

日本は①の時期にあり、アメリカと一部のヨーロッパの国々、そして中国はすでに②の段階に入っている。

ここで遅れているからと、日本は焦ることはない。ワクチンはともかく、幸いなことに既存の抗ウイルス薬のうち新型コロナウイルスに有効でかつ安全性が確認された複数の治療薬が、近く臨床の現場で使えるようになる。治療薬を重症の患者に投与して救命活動を続け、防疫を着実に進めたい。

政府の専門家会議は、外出や営業の自粛など徹底した行動制限の継続を求める一方で、学校を再開する考え方も示している。全国の新規の感染者数が減少傾向にあることを評価しているからだ。