「部屋にいない人間に、『部屋にもどれ』と何度も放送」

10:28 ふたたび友人Kとのショートメール交信

私「世の中、この船のこと、どのようなニュースになっている? 明日行く予定の病院に診察延期のTELをした。理由を話したら受付がすぐ理解してくれた。そこまで有名なこと?」

これに対する返信はない。

11:15 友人K「船と、そちらの状況がわからない。連絡されたし」

私「ただいま船内放送。検疫作業は70%終了。検疫官を増やして作業しているらしい。部屋にいない人間に、部屋番号を読み上げ部屋にもどれと何度も放送。次の放送は十五時過ぎらしい」「夜に下船させられても、帰れない、寝る場所がない、船内でもう一泊かな? 船のほうも、次のクルーズ予定を一日延期したらしい」「今、ネットを見た。ネットではしばらく乗客を隔離しろとの意見が多数。テレビはどう言っている?」「検疫70%終了は乗客のほう、クルーズスタッフは全員終了らしい」

友人K「ネットは実にダメ。テレビではそんな話は全然ないよ。ネットの異常さがよく見える!! 常識を信じよう。大丈夫だよ」 

友人は「船内は大混乱」という一方的なイメージに苛立っていた

14:18 ふたたび友人Kとのショートメール交信 

私「全部の検疫がすむのは夕方だと思う。それからの下船は乗客から文句がでる。だからもう1日乗船、明日朝から下船開始と思う。那覇から検疫が異常に強くなった。次に船から感染者出る、だもの。今日下船できると思って荷造りに励んでいたのにねぇ」「船(会社)のほうには2日には感染の情報は入っていたんじゃないかな。驚いたろうね。これからの対策や、次のクルーズを考えたら大混乱だと思うよ。さっき玲子がフロントに行ったら、外国人が列をなしていたそうだ。飛行機、ホテルのスケジュール調整、考えただけでも気持ち悪くなる」

友人K「テレビがガンガン放送しているけれど、船内の様子がさっぱりわからない」

私「船内はいたって平和。でも公共の場所はフロントをのぞいて人は少ないかな。しかしねぇ、プールのそばでマージャンやっているし、卓球もやっているしね」「体調の悪い数人の検査の結果が出るのが今日の夜。下船予定はそれから組まれると予想」

友人K「先に下船した人物、脳梗塞かも、との放送だった。乗船客の数に対して、検疫をするスタッフが圧倒的に足りないと放送。40人しか乗り込んでいないらしいよ」

すでに私の関心は下船の時期に集中していた。一方友人Kのほうはテレビが流していた「船内は大混乱している」という一方的なイメージ(そう私は想像した)に苛立ち、実際の船内の様子を知りたがっている。

私は部屋から船内に飛び出し、14階から7階まで一巡し、特徴的な写真を撮った。友人に本当の船内の姿を伝えたかったのだ。なぜこうも船内と船外の様子、イメージ、情報が食い違うのかそれを伝えたかった。

撮影=小柳 剛
小柳さんが撮影した船内の様子。プールサイドで麻雀を楽しむなど、船内の雰囲気は落ち着いていた。

このあと、部屋から私は数枚の船内写真を友人Kに送った。Kはこの写真を見て、社会が想像するイメージと船内の様子があまりにも違うことに驚くのである。