コロナ大不況がタワマン中産階級の家計を襲う
しかし、取得倍率が5とか7を超えて、無理に無理を重ねてタワマンを購入したパワーカップルの涙ぐましい自意識生活も、今次コロナ禍で崩壊するだろう。最近発表されたIMFの経済予測は衝撃的であった。20年の世界経済はマイナス3%程度に急減速する。先進国の経済成長は特に欧州でマイナス5%から10%の範囲に落ち込む。世界経済をけん引してきた中国経済は、わずかにプラスだが1%台にという歴史的低水準に降下する。世界経済の旗振り役が居なくなり、日本の経済成長予測はマイナス5%強となる。まさしく08年のリーマン・ショックよりも巨大な恐慌が始まりつつある。
このような中で、日本経済は確実にデフレが高進する。当たり前のことだが、デフレ下において負債は実質的に増大する。単純計算でマイナス2%のデフレは5000万円の負債を5100万円に膨張させる。これに対し、低いとはいえ決して無視できない住宅ローンの金利がのしかかってくる。すると住宅ローンはただでさえ貧弱な家計をますます圧迫する。
パワーカップルのいずれか一方が失業すれば破滅の音はさらに近づく
タワマン購入時、「いざというときは購入したマンションが資産になるので安心である」などという口上は崩壊する。当たり前だが、タワマンを手放したいと思っても買い手がつかなければ現金化はできない。不動産の現金化には時間がかかるのは常だが、恐慌下ではますます買い手が居なくなる。パワーカップルのいずれか一方が失業すれば破滅の音はさらに近づく。そうして購入時に「いざというときには資産になる」などという期待は裏切られ、大幅に値引いた形で部屋を手放す所有者が激増する。そうして底値まで下がったタワマンを絶好の好機ととらえて虎視眈々と狙い、余裕資金でもって投資目的等で購入するのは、同じパワーカップルなどではなく、この国における真の富裕層、つまり都心部に伝統的に土地所有権を有し、デフレ下で実質的に金融資産が肥大する富裕層や法人である。これは、現在だけではなく過去にも繰り返されてきた弱肉強食の摂理である。結局、地主・土地持ちが絶対の勝者なのである。
こういった構造を知らないか、知っていても頭の片隅に追いやってつかの間の「タワマンでホームパーティー」画像をSNSに投稿して悦に浸っている偽りの有閑階級が、今次コロナ禍の人的被害よりも圧倒的に深刻化するであろう経済恐慌を無事に乗り越えられるかどうかは相当怪しい。