新しい石原裕次郎像の誕生

本人は自著『口伝 わが人生の辞』でこう語っている。

“ファンの中には、昔のような、アウトローもののアクションをやってくれという人もいるけど、アウトローをやる年でもないし、あれをもう1回やれというのは、しんどいね。
だけど、僕に言わせれば、アクションっていうのは、殴り合いをやればいいというもんじゃない。そこを日本のライターは勘違いしていると思うね。”

これは「太陽にほえろ!」での経験が言わせたものではないだろうか。ショーケンをはじめとするレギュラー陣の活躍や、青春ものとしての刑事ドラマということが浸透していくとともに、映画の石原裕次郎を知らない、まったく新しい石原裕次郎ファンが生まれてきた。一度落ちた視聴率がまた20%を超えたことが、それを示している。

そして何よりも、新しい石原裕次郎像が誕生したことがもっとも嬉しい。ボスとして彼を起用して本当に良かった、と思った。

「13本でやめる」と言いだした裕次郎に大慌て

「ワンクール、13本でやめるよ」

石原が話し合いもなく、いきなり言いだした。この時、放映は5話まで終わっていて、制作は10話まで進んでいる。あまりにも時間がない。

最初の約束だったとはいえ、あれは「噓も方便」と言ったら語弊があるが、とにかく出演してもらうための苦しい物言いだ。こちらとしては、少なくとも5年は続けたい。長期番組のつもりである。会社にも、スポンサーにも、そう説明していた。

その段階では、最低でも1年は番組を続ける約束をしていた手前、13本で石原に降りられたのではとんでもないことになってしまう。

時間がない中、梅浦プロデューサーと必死になって策を練った。直接本人に会って口説くしかない——それが結論だった。

成城の石原邸に向かったこの時のことは、今でも昨日のことのように覚えている。私と梅浦プロデューサーだけでなく、ゴリさん役を演じている竜雷太を連れて行くことにした。間違いなく、酒を飲みながら話すことになる。私はまったくの下戸、梅浦は多少飲めるが、飲みながら相手を説得できるタイプではない。そこで、竜の出番となったわけだ。