「テレビは捨てたもんじゃない」竜雷太の説得
私たちは懸命に話をした。番組はボスがいて初めて成立する。少なくとも1年間、できれば番組が続く限り、ボスはあなたしかいないのだから……。
竜雷太は同じ役者同士として、飲むにつれ本音が飛び出した。自分はテレビで育ったという自負があるからか、それとも酔った勢いからか、突然、石原に嚙みついた。
「テレビをバカにしないでください!」
一瞬、わが耳を疑った。石原も驚いている。
「ボス、テレビっていうのは、捨てたもんじゃないですよ」
そこからは、酔っているくせに理路整然と話した。
「太陽にほえろ!」は全国ネットで視聴率20%の番組だから、見てくれている人の数は映画よりはるかに多い。子どもからお年寄りまで、老若男女が見ている。しかもこの作品の内容は素晴らしい。とどまることなく、竜の説得が続いた。石原は黙って聞いていた。
酒を酌み交わして口説いてくれた
それまで黙って聞いていたまき子夫人が、助け船を出してくれた。
「これからはテレビっていうのがあるかもしれないから、それだけ言われるんだったら続けてみたら?」
まき子夫人の援護が嬉しい。石原の心が、次第に「続ける」方向に傾いていくのがわかった。
「こんな良い番組はほかにない!」
竜はまだまだやめない。まるで異性を口説くような物言いの竜に向かって、石原が笑いながらボトルを手にした。
「わかったわかった! さあ、もっと飲めよ!」
二人で酒を酌み交わしていく。
我々の代弁者となって、竜は石原を口説いてくれた。必死に説得してくれた。嬉しかった。本当に嬉しかった。竜の熱意と石原の心意気に、飲めない私まで酔わされてしまった。
石原が13本で降板とならなかったのは、ひとえに竜雷太のおかげである。そう断言してもいい。