五輪に向け、観光客にシフトしたラブホテルたち

ラブホテル業界には「3つの黄金バランス」というものがある。不倫・風俗・一般的なカップル。この3つの利用者層で満遍なく回転しているホテルが儲かると言われている。ここ数年は、一般的なカップルの利用が減少してきたため、女子会やパーティーなど、複数人での利用や同性同士の利用、ビジネス利用やおひとり様、観光客を取り込むことでバランスを保ってきた。

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現在ダメージを受けているのは、風俗利用客に多く支えられていたホテルと、観光客にシフトしてしまったラブホテルだ。風俗は濃厚接触必須であり、観光客に関しては、当然ながら国内客もインバウンド客も壊滅的な状況だ。

風俗客で潤うホテルはルームサービスや無料レンタル品などのサービスにそれほど力を入れていない。一方、観光客をメインに扱うラブホテルは、リピーターよりも一見さんの獲得に注力する。つまり、変わった設備や最新アイテム、話題になりそうな変わり種サービスなど、飛び道具的な特徴を前面に打ち出してきた。

それぞれ、利用者層に合ったサービスを展開してきたが、ここにきて「もとからいた顧客を大切にしてきたホテル」が生き残っているのだ。

コロナに打ち勝っているラブホテルもある

東京五輪の開催が決定し、大阪万博も決まり、切れ者のラブホテル経営者ほど観光客獲得にシフトする傾向が強かった。それは至極真っ当な経営者判断であるし、全力で結果を取りに行くなら、ほかの道は切り捨てることもやむなし、と舵を切ったオーナーを誰も責めることはできない。だって、まさか、五輪が延期になるなんて、誰も思ってもいなかったのだから――。

今まで当然だったことが当然ではなくなり、“まさか”が起こりうる世の中になっている。

情報すら不確かななかでも、都内を中心に、お客様ファーストでホスピタリティマインドの高いラブホテルは、ホームページに「コロナ対策」を掲載している。ホテルスタッフ全員マスク着用、多くの人の手が触れるロビーの手すりやドアノブや客室内の除菌などを実施している旨を伝え、顧客に安心して利用してもらえるよう積極的にアピールしているのだ。

こういったホテルは、日頃からアンケート調査を積極的に行い、利用者からの意見をサービスに反映し、口コミサイトの投稿には御礼とともに返信するなどして、顧客との繋がりを大切にしてきた。つまり、風俗客や一見さんメインで運営せず、一度でも利用してくださったお客様の声を大事にし、長い年月をかけて顧客との信頼を築いてきたホテルだ。そういったホテルは今回の新型コロナでも、それほどダメージを受けているとの話は聞かない。