「都=善、国=悪」の構図をつくってしまった戦犯
最大の理由は、今回のような未曾有の危機の中で、政府の要となる人物がいないことがあげられる。今回のコロナ対応を巡っては、西村康稔経済再生担当相が責任者ということになっている。
安倍内閣で官房副長官を務めた西村氏は、安倍氏の信頼も厚い。経産省OBで、政策通でもある。ただし、言葉が軽く、相手の心のヒダが読めなくて冷たいという評価もついて回る。
2018年7月、副長官時代の話。自民党は赤坂の議員宿舎で「赤坂自民亭」という懇親会を開いたのだが、日本列島に記録的な豪雨が襲うことが予想された夜だったこともあり、国民からは批判の声があがった。そのきっかけをつくったのが西村氏だった。
「自民亭」で大いに盛り上がっている安倍氏ら自民党議員の写真を自身のツイッターでアップしてしまったのだ。西村氏はこの後、謝罪に追い込まれている。
菅氏を退けたことが、コロナ対応の迷走の理由か
今回でも「らしさ」が出ている。緊急事態宣言後の休業要請、休業補償などの問題については小池氏との交渉の窓口になっているが、話がまとまらない。世論操作にたけた小池氏に手玉に取られている印象は否めず「都=善、国=悪」の構図をつくってしまった戦犯でもある。コロナ対応の前面に立つには心もとない人物と言わざるを得ない。
他にまとめ役を担う人材はいなかったのか。危機管理といえば、菅義偉官房長官の名がすぐにあがるが、今回のコロナ対応では影が薄い。
最近、安倍氏と菅氏の間には、すきま風が吹いていると言われることが多い。その「すきま風」が原因で、安倍氏が菅氏を退け、それが遠因として政府のコロナ対応が迷走しているとすれば、国民には不幸なことだ。
アベノミクスに批判的な勢力はしばしば、安倍氏の危うさを「アベノリスク」として追及していた。安倍政権のリスクが、今のような危機下で顔を出してきたのだろうか。