彼女の顧客ノートには、もうひとつポイントが。常連客をタイプ別に分類しているのだ。たとえば1回の来店でたくさんカネを落とすものの、来店の頻度が低い場合は「単価高」と記される。逆に単価は低いが頻繁に店に顔を出す客は「単価低・本数」となる。
店によっても異なるが、キャバクラの給与形態は時給に加え、指名につき1本で1000~2000円、飲ませてもらったドリンクの10%前後を報酬としてもらえる店が多い。
さらにAさんが働くような比較的客単価の高い店では、ポイント制で時給が決められる。たとえば指名は1本で2ポイント、同伴出勤であれば4ポイントといった形だ。月単位でこのポイントを集計し、それに応じて来月の時給が決まる。
そのため、たくさんカネを使って長時間居座る客が常に歓迎されるわけではない。月末にポイントが足りず、時給ダウンのおそれがあるときは、短時間で帰る指名客のほうが効率よくポイント稼ぎができるため、都合がいい。
こういった分類が、Aさんの収入増の手助けとなる。
「指名数はクリアしているけど、出勤時間が足りないときは、単価高の客に営業をかけまくるんです。指名客が来なくてお店がヒマな日は『今日はもうあがって』と言われ、時給がもらえなくなりますから。逆も同じで、指名数が足りないときは本数客でポイントを稼ぎます」
なるほど、確かに理にかなっている。しかしAさんの収入は月に30万~60万円ほどで、彼女いわく「私くらいの収入なら歌舞伎町じゃなくても掃いて捨てるほどいる」という。
キャバ嬢向けの顧客管理アプリが
続いて、Bさん(20歳)の顧客ノートを見てみよう。六本木の某店で働く彼女はキャバ嬢向けの顧客管理アプリを利用しており、Aさん同様、客の特徴を細かに記している。
そもそも「キャバ嬢向けの顧客管理アプリ」があるというのが恐ろしい。それほどキャバ嬢にとって顧客管理は当たり前のことなのだろうが、やや話を聞くのが憂鬱になる……。
彼女は常連客を彼女への貢献度、つまり同伴の頻度や金払いの良さなどによって1~4軍に分類している。Aさんと違うのは、客のちょっとしたエピソードを盛り込んでいることだ。
「たとえばお客さんが会話の中で『高校のとき、はじめて家族のために夕飯を作ったんだ』みたいな話をしたとするでしょ。そういう些細な話が出ると必ずメモっとくんです。次にお店に来たとき、その話をしたらチョー喜んでくれるんで」