日本の保守派の嫌韓に唖然とする台湾の学生

日本の「保守派」が如何に「従軍慰安婦は売春婦で、日本は韓国統治(朝鮮統治)で良いことをしてやった」と叫んでも、欧米人の認識はまったく動かない。そしてこんな理屈が通用するのは、自閉した日本の「保守サロン」だけで、大学の学部レベルですら同じことを論文にしたら「君は馬鹿か」と言われて即時F(不可)をもらうだろう。実際に同じような趣旨をツイッターで叫んで東京大学特任准教授を解雇された例もあるくらいである。

一方アジアに目を向けると、事情は少し違ってくる。落ちぶれたとはいえ日本はアジア第2位の経済大国であり、地域に与える影響はきわめて大きい。当然周辺諸国は日韓の歴史認識の違いや対立については、欧米人よりもはるかに興味をもってその推移を見守っている。しかしここでも日本の「保守派」による「嫌韓」はまったく支持を得ていない。

筆者が台湾の学生(院生含む)と話したとき、彼らは日本による戦前の台湾統治についておおむね肯定的評価で一致していた。ただしそれは「日本による台湾の植民地統治」という前提を是認していることを踏まえている。「日本の一部右翼は、朝鮮半島の統治がそもそも植民地支配ではない、という言説がまかり通っている」というと、皆一様に「信じられない」という反応で、「日本による朝鮮統治が植民地支配ではないのだとしたら何だというのか」と返す。

なぜフィリピンの慰安婦像は撤去されたのか

台湾の青年知識層に対して、日本の「保守派」による身勝手な嫌韓は全くお話にもならないほど低次元のトンデモと受け入れられている。

同じく隣国のフィリピンではどうか。自治領(比コモンウェルス)やマルコス政権時代を含めると約1世紀にわたるアメリカ従属体制を経験した同国では、民族主義的傾向の強い歴史学者が先の大戦での日本軍の戦いを評価する動きもある。しかし、「大日本帝国は朝鮮と台湾を植民地統治していた」という歴史事実は揺るぎがないほど普遍的認識として共有されており、「日本軍による戦時性暴力」についても日本の「保守派」の味方をする気配はない。ただし在比華人団体の支援により2017年にマニラ市に設置した慰安婦像は翌年撤去されている。これは比政府が「従軍慰安婦は単なる売春婦」という日本の「保守派」の身勝手な主張を認めたものではなく、経済的に影響力が強い日本政府の遺憾の意を考慮したものと推察される。

一貫して敗北し続ける「歴史戦」

日本の「保守派」は、2010年代前半から、こういった特に日韓関係における日本側(保守派)の主張を国際社会に受け入れさせることを「歴史戦」という呼称を用いて正当化させようとしている。例えば自民党の杉田水脈代議士は、下野時代この運動の最前線にいたが、ことごとく敗退した。なぜなら日本の「保守派」が唱える「歴史戦」が、あらゆる意味で基礎的歴史事実に基づいていないからである。現在、対日感情が比較的良い隣国である台比両国でも、「朝鮮統治はそもそも植民地支配では無かった」とか「従軍慰安婦は売春婦だった」などのトンデモは論外として全く受け入れられていない。

しかし日本の「保守派」は、日本国内の学部レベルですら論外とみなされる異様な主張を、サンフランシスコやヨーロッパでも壊れた機械のように繰り返し絶叫し、そのたびにファクトを述べる韓国側の主張が皮肉にもあぶり出される格好となり、敗北を続けている。「歴史戦」と自称しているのに、一貫して敗北し続ける戦線も珍しい。欧米人を含めた国際社会に日本の「保守派」による「嫌韓」が共感を持って迎えられる日は恐らく永遠に来ないであろう。

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