東京から地方へ“コロナ疎開”が合理的ではないワケ

同じ東京都内でのこうした差の要因については2つの理由が考えられるのではないか。

ひとつは、感染率が高くなっている都心部ほど人口密度が高いため、人と人の距離が近接していて、住んでいるだけで感染のリスクが高くなるからというものだ。

もうひとつは、感染率の高い港区、台東区、目黒区、新宿区、中央区、渋谷区などにたくさんある繁華街で働いていたり、病院で働いていたり、海外との行き来が多いため感染リスクが高くなっている職業の人がその地域に住む傾向にあるから、というものだ。

最近、東京から地方へ“コロナ疎開”する動きも見られているが、もし、後者の理由が主であるとすれば、そうした職業の人は地方に疎開、もしくは移住しても潜在的な感染リスクは変わらないだろうし、そういう職業でなければ、感染リスクから逃れるために東京脱出を図るのは合理的な行動とは言えないだろう。

図表3には、3月31日から4月4日までのわずか4日間の動きであるが、感染者数の変化が分かるように3月31日の値をオレンジの点で図示するとともに、図中にこの間の増加数と伸び率のランキング表を付記した。

増加数は感染者数最多の世田谷区や都心各区で大きいが、伸び率は、むしろ、都心部よりも周辺部(板橋区、葛飾区、墨田区など)で大きい。感染が同心円状に広がりつつあることを示しているといえよう。

今後、特に感染者数や感染率の動向を注視すべきは「埼玉都民」

東京以外の埼玉と北海道でも地域別の感染率の濃淡を調べてみたので結果を図表4と図表5に掲げる。

埼玉では南部、東部、南西部、西部といった東京と隣接するいわゆる「埼玉都民」が多い地域で感染率が高く、利根地域や秩父地域など東京から遠い地域では感染率も低くなっている。東京都心からの感染率の同心円的な傾斜が埼玉にも及んでいるととらえられよう。

やはり、通勤・通学などを通じ東京からの影響があると見ることができる。ただし、感染率の最も高い川口などの東部地域ですら、10万人当たりの感染者数は3.2人と都内の墨田区、葛飾区より低くなっており、それほど大きな波及効果があるとも見られない。

今のところ、東京への通勤はあぶないというほどではないが、今後、埼玉都民の感染者数・感染率が一気に上昇する局面ともなれば、それは地方を含む全国的な感染爆発の予兆と言えるかもしれない。

一方、北海道は、感染者の規模は札幌が群を抜いているが、感染率では、札幌のほか、檜山地域やオホーツク地域でも札幌以上に高くなっており、クラスター連鎖が起こっている特定感染地域の影響が大きいと言えよう。