自分たちが何のために働いているのか

我々の仕事も同じです。街づくりは目的ではなく、人々を幸せにするための手段。その実現のためには「ここまでできればいい」といった終わりはなく、本田さんのように「やれるところまでやったのか」という意識を持ち続けなければいけません。もし、儲けることを目的にすれば、一定の目標に到達すればよいと思ってしまう。それを戒めるためにも、社員には、自分たちが何のために働いているのか、本来の目的を常に考えようと呼び掛けています。

もう1つは、「頭ではなく身体で考える」こと。研修では、本田さんの薫陶を受けたホンダの元エンジニアの小林三郎さんのお話を聞く機会がありました。小林さんが、本田さんから教えてもらった一番大事なこととして挙げていたのが、この言葉です。「頭で考えただけで物事を判断するなんてとんでもない。現場・現物・現実を実際に経験することによって、初めて正しい判断ができる」――この言葉を聞いて私は、まさにこれだと思いました。

私は三菱地所に入社以来、ニュータウン、横浜ランドマークタワー、丸の内と一貫して街づくりに携わってきました。どの街づくりにも共通するのは「この開発は相手にとってどんな意味があるのか」を、相手と話し合いを重ねながら考え続けたことです。まさに頭だけではなく身体で考えなければ、共感を得ることはできなかったと、小林さんの話を聞いて実感したのです。

街づくりとは、そこに生活する人々の想いを結集させることであり、その中に自分がいかに溶け込めるかが重要です。いまもそれは変わりません。池袋の街とともに成長する未来をつくっていきたいですね。

(構成=増田忠英 撮影=研壁秀俊)
関連記事
なぜか「いつも誰かに助けてもらえる人」に共通する3つの行動
全社員解雇の衝撃から、たった3カ月で起業した女社長の覚悟
この15年で130万人の営業マンが消滅したワケ
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ
スバルがメイン事業だった「軽自動車」から見事に撤退できたワケ