僕がベンチャーを起業した理由は、こうした損得の問題もさることながら、大企業の仕事は退屈だと思ったからだ。

高度成長期は、東京タワーが建ち、新幹線が走り、オリンピックが開かれるといったイベントを、わがこととして喜ぶことができたのかもしれない。共同体幻想を抱くことができた時代と言ってもいい。高度成長期のサラリーマンが退屈なルーチンワークに耐えることができたのは、社会の発展に自分の夢を重ね合わせることができたからだろう。

しかし、高度成長期が終焉してからは、そうした共同体幻想を抱くことはもはや不可能になってしまった。ルーチンワークは、ただの退屈な仕事になってしまったのだ。というより、そもそも退屈な仕事を、人々が素直に退屈だと認識する、正常な世の中になったと言うべきだろう。

僕は、ニートやフリーターが増加している原因は、ここにあると思っている。彼らは、素直に大企業や公務員の仕事は退屈だと思っているのだ。だから就職したくないのだ。それが、多くの若者の正直な気持ちだと思うし、すでに大企業で働いている人たちも、本心では、毎日退屈だなぁと思っているのではないか。

では、ベンチャーの仕事は退屈しないかというと、少なくとも僕がやってきた仕事は退屈ではなかった。何が楽しいかといえば、いろいろな世界の人と、いろいろな仕事ができることが一番楽しい。就職ランキングで、商社やマスコミの人気が高いのも、同じ理由からだろう。

僕が一番大切にしているのは、毎日を退屈せずに楽しく過ごすこと。辛かったのは捕まったときぐらいで、起業してからの人生はずっと楽しかった。僕は、生まれ変わっても絶対に起業すると思う。いや、もっと早く、小学生ぐらいで起業できれば最高だったとさえ思っている。

(山田清機=構成 初沢亜利=撮影)