資本は売り上げや生産性だけではない

そもそも「まちのコイン」を始めようと思ったのは、これまで「見えない資本」とされていたものを定量化できないかと考えたことがスタートでした。

カヤックでは「地域資本主義」という考え方を提唱しています。GDPをはじめ経済成長を測る指標を追い求めすぎた結果として、環境破壊やいきすぎた貧富の格差が生まれているのだとしたら、別の指標を導入することで、持続可能な成長を実現できるのではないか。そして、そのヒントは、地域にこそあるのではないかと考えました。

地域にはさまざまな固有の魅力があります。たとえば、人と人のつながりや、美しい自然や文化などです。売り上げや生産性を生み出す従来の経済資本、つまり「地域経済資本」に加えて、そうした魅力を「地域社会資本」「地域環境資本」と捉え、三つの地域資本と考える。それぞれの地域が、地域資本を増大していくことで、横ならびにならない多様性ある魅力を育むことができるのではないだろうか。そんな考え方です。

地域通貨の価値が高まるとどうなるのか

けれども、これまでのお金では、これまで定量化されてこなかった「地域社会資本」「地域環境資本」を測ることは難しいのではないでしょうか。仮に換算できたとしても、これまでのモノサシに収斂されてしまうからです。だったら、今のお金の補完となるような形で、新しい価値を測るお金、新しい価値を生み出すツールとなるようなお金をつくることはできないだろうかと思いました。

柳澤大輔『リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来』(KADOKAWA)

中でも、地域社会資本を見える化するためにつくったのが「まちのコイン」です。

つまり「まちのコイン」は、仲よくなるためのお金なのです。使えば使うほど、人が仲よくなってしまう。社会資本を増やし、社会資本を測る。それが「まちのコイン」の目指すところです。持っているだけで使わなければ、仲よしは増えません。だから、使わずに持っているだけだと価値が減っていってしまうのです。

「まちのコイン」のひとりあたりの流通の多い地域は、人のつながりが多く、社会資本が充実しているまちだということになる。だから、そのまちの企業も行政も市民も「まちのコイン」の流通量を増やそうという力学が働く。GDPを補う新たな指標になるのではないか。これまで定量化できなかった資本を地域通貨で測る。そんな試みです。

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