固定資産税は数万円、預貯金1500万円程度の「実家」でも…
また別のB家の場合。税理士の海老原宏美氏(タックスアドバイザーズ)が説明する。
「東京23区で目立たない場所にある40坪くらいの家でした。そこでご主人が退職してから夫婦で年金生活をしていたんです。家屋は相当な築年数で、毎年の固定資産税も数万円、預貯金は1500万円程度。ご夫婦も、そのお子さんたちも、“資産家”とはゆめゆめ思いません。ところが……」
父親が亡くなってしばらくすると、やはり税務署から「お尋ね」が届いた。子供たちが慌てて相談にきたという。
「土地に3000万円近い価値があったため、ギリギリ申告が必要だったのです。基礎控除額が4割減となったことで、これまでならセーフだった額も、アウトという相続が近年は増えました」(同)
自宅のように容易に分割できないものだと問題が生じやすい
相続人は亡くなった人の財産に関する資料集めから右往左往し、そして税務署からの「お尋ね」にびっくり仰天する。相続税の申告や対策をサポートするため、服部氏、海老原氏、目黒氏らは2015年に「相続相談解決チーム」を立ち上げた。2016年にはチームで『サラリーマン家庭の相続』(あっぷる出版社)を刊行している。
「一般的なサラリーマン家庭であれば、相続する財産は自宅家屋とその敷地という不動産、預貯金を中心とした金融資産です。そこで争いなく、自宅と金融資産の分割を終え、定められた期限までに相続税の申告納付を行うことが重要です」(服部氏)
現金のように分割できる財産であればいいが、自宅のように容易に分割できないものだと問題が生じやすい。一般的に実家は、代々引き継がれた家か、両親が稼いで購入した家かは別にして「不動産は一つ」だろう。するとその不動産をどうやって按分するかが最重要ポイントになる。
「トラブルになりやすいのが、子供が複数いて、そのうちの誰か一人が実家住まいの場合です。両親どちらかが存命で、その子供と住んでいるケースならまだいい。子供たちは、残された片親が引き続き居住することは納得しますからね」(同)
兄弟間で起きた実家トラブルではこんなケースがあったという。