大学の授業料は無料、多くが修士へ

美容の学校では、美容師やメイクアップアーティストを目指す友人たちに依頼され、学校でモデルを務めた経験がある。アジア人の顔のつくりや、肌の色、髪質はフィンランドでは珍しいので、いつもと違っていい練習になるそうだ。

写真=Riku Isohella/Finland Promotion Board

「うわ、髪が太いのね」とか、一重のまぶたを見て「アイシャドウをどこにのせればいいのかしら」などと言われながら、ものすごく時間をかけてカットやメイクが行われた。結果はとても満足のいくものではなかったが、今では笑い話として思い出に残っている。

他にも英語で学ぶ国際経営の専門職大学コースで日本について語ったこともある。ここを卒業すると経営学の学士が取得できるが、仕事をしながらさらに上の修士を目指して総合大学に編入する人もいる。

総合大学に行く場合は、授業料が無料で、住居費や生活費も支援されることもあり多くが修士取得まで勉強を続ける。教師や弁護士、建築士などは医師と同じく大学のその学部に入った時点で将来がある程度決まる。さらに役者を目指す人は、狭き門である演劇学科のある大学に、報道を目指す場合はジャーナリズムの学科のある大学にと、総合大学でも学部と仕事が直結しているものもある。

しかし、経済学部、商学部、工学、化学、情報、などは専門職大学ほど仕事にリンクはしていないし、中身も細かくない。なんとなく将来役立ちそうだから経済学部に、と明確な目標がないまま学んでいる人もいる。それでも授業自体は少人数で、より実践ベース、ワークショップやプロジェクトワークもする。

社会人向けの講座が充実

私がコミュニケーション学部で勉強した時も、大学に新しくできた施設を紹介する冊子や、広報誌を授業で作成した。修士論文も、企業や団体の依頼を受けて執筆するものが多い。また、夏休みに仕事をしたり、半年の長期研修に参加したりする学生も多いので、仕事と勉強の間に完全な線がひかれているわけではなく、それぞれがリンクし合っている感じだ。

また、大学、職業学校、専門職大学、さらには地域の学習センターなども社会人向けの短期から長期の安価な講座を多く用意し、仕事や資格を得た後でも、さらに専門性を高めたり、新たな資格をとったりすることができる。転職や昇進に役立てるために勉強する人も多い。

例えば、保健師であれば、簡単な処方箋が書けるような資格や、精神的な病気を抱えている患者への対応などを学んで専門性を身につけることで、仕事の幅が広がる。専門職大学で講師を務めることになった友人は、「人に何かを教える」には教育学の知識も必要だとして、自分の専門分野とは別に教育学や教師養成の勉強をした。