——経営破綻について報道で初めて知ったスカイマーク社員も多かったそうですね。突然の出来事で驚いたと思いますが、なぜ「お客さまに感謝の気持ちを伝える」という動きになったのですか?

【本山さん】「もちろん、自分たちの生活がどうなるのかもわからず、不安でした。でも、経営破綻した航空会社なのに、選んで搭乗してくれるお客さまがいることがありがたかった。後ろを振り返ってはダメ、これからファンを増やしていくしかない。ランプ管理課のみんながそうした気持ちだったのだと思います」

——そのときのメッセージボードにはなんと?

【本山さん】「『ご搭乗ありがとうございます』と『ここから先も気をつけて行ってらっしゃい』の2種類をつくりました」

写真提供=スカイマーク
経営破綻直後の見送りの様子

他社とスカイマークでは「地上職員」の立場が違う

ランプ管理課は搭乗客の目に触れないところで運航を支える地味な仕事だ。乗客との接点を持たない職場にあって、ここまで乗る人のことを想像し、行動できるのはなぜなのか。そんな疑問をぶつけると、ランプ管理課スーパーバイザーの水野慎介さん(37)がこんな話をしてくれた。

【水野さん】「僕らがスカイマークを好きだからだと思います。他社とスカイマークでは仕組みが違うんです。

僕たちランプ管理課の仕事は一般に『グランドハンドリング』と呼ばれます。手荷物や貨物の仕分け、機体の地上誘導、航空機の牽引、機内清掃など業務は多岐にわたりますが、多くの航空会社ではこの仕事を子会社や専門の会社などに外注しています。

僕は29歳でスカイマークに転職するまではグランドハンドリング専門の会社で働いていました。そこでの仕事は、手荷物の仕分けだけを延々とやるなど業務が細分化されていて、『作業をこなす』という感覚でした。

でもスカイマークはグランドハンドリングでも同じ会社の社員です。このためランプ管理課で働いていても、『スカイマークの飛行機を飛ばしている』という気持ちで働くことができる。前職とは仕事への思いが全く違います」

——なぜ「飛行機を飛ばしている」という思いが大事なのですか?

【水野さん】「社員であれば、自分の会社の飛行機が安全に定刻に飛び立ってほしいと思うものでしょう。でも、グランドハンドリングだけを請け負っている立場だと、飛行機が遅れたとしても自分には関係がないと思ってしまう。

同じスカイマークの社員として飛行機の運航に責任を持てるということが、スカイマークへの愛着を高めていると思います」