あのメッセージボードは3月4日朝9時から使っていた

このメッセージボードを掲げていたのは、スカイマーク千歳空港支店ランプ管理課に所属する木下崇さん(32)だ。

スカイマーク千歳空港支店では91名が正社員として働いている。そのうちランプ管理課に所属するのは34名。朝6時から23時まで、3交代制だ。

3月10日の午後、東京・千代田区のプレジデント社から、スカイマークの千歳空港支店にLINE動画をつないだ。話を聞いたのは、木下さんをはじめとするランプ管理課の3人だ。

——「大変な時ですが乗ってくれてありがとう」というメッセージを発案したのはいつですか?

【木下さん】「2月の末です」

——きっかけを教えてください。

【木下さん】「コロナウイルスの影響でお客さまの数が目に見えて減っていました。そんななかで、飛行機を使ってくれるお客さまにお礼を伝えたいよね、という話がランプ課で持ち上がり、やろうと。初めてあのボードを使ったのは、3月4日朝9時、茨城空港に向かう790便を見送るときでした」

2019年のクリスマスに千歳空港支店で行われた見送りの様子
写真提供=スカイマーク
2019年のクリスマスに千歳空港支店で行われた見送りの様子

——搭乗客の反応は外からわかるのでしょうか?

【木下さん】「見えますよ。窓辺からお客さまが手を振って応えてくださるのがわかりました。僕らランプ部門は直接お客さまと接する機会はありません。こうして気持ちが伝えられてうれしいと思いました。単純に、うれしい、ありがとう、それだけです」

——飛行機が離陸する際、地上職員のみなさんが手を振る姿を見かけることはありますが、メッセージボードは珍しいのではないですか?

【木下さん】「メッセージボードを使っているのはスカイマークだけじゃないかと思います」

初めてボードを使ったのは経営破綻翌日だった

ここから話は当初の想定を越える方向に進んだ。スカイマークがメッセージボードを使ったのは、経営破綻した5年前からだったからだ。答えてくれたのは、ランプ管理課グループ長の本山理貴さん(44)。

【本山さん】「僕らが初めてメッセージボードを使ったのはスカイマークが経営破綻した翌日の2015年1月29日です。当時の課長が『こういうときだからこそ、自分たちでできることを考えてやっていこう』と。お客さまに感謝の気持ちを伝える具体的な方法としてメッセージボードに『乗ってくれてありがとう』と書いて見送りをしようと提案がありました。僕らはそれを聞いて即座に『やろう』となったのを覚えています」