値段をつり上げたのは「にわか素人」ではないか
「最初は法人企業や中国の人の買い占めからマスク不足が始まりました。ドラッグストアやコンビニからマスクがなくなって、ネットに探しにくる人が増えて『これは商売になる』と思った人が高額転売を始めたと予想しています。大量にマスクを仕入れるためには資金が必要だし、リスクも大きくなります。だから、初期の頃はオークションやネット販売に慣れた法人企業の出品が多かったのではないでしょうか。しかし、転売を本業にしている人は、マスクのブームがすぐに終わることを知っているので、異常な高値で転売をするようなことはしなかったと思います」
確かにその通りだ。事実、この1カ月のマスクの落札価格を振り返ると、最初の10日間ほどは異常というほどの価格ではなかった。では、異常値まで引き上げたのは一体誰なのか。
「ネット販売に不慣れな法人企業や、にわかでマスクを売り始めた素人の方が価格をつり上げたのではないかと思います。マスクは単価が低くて壊れにくいし、保管もしやすいですから、素人が手を出しやすいんです。個人でも仕入れられる商品なので、そういう人が熱くなって高額転売に手を出していったのかもしれません」
マスクを高額で販売し続ける人は、転売経験の浅い素人ではないか。最近、フリマアプリを使ってさまざまな商材の転売に手を出す主婦やサラリーマンが増えていると聞く。そう考えれば、この仮説にも納得がいく。
マスク1000枚を25万円で落札する人の狙い
では、この人たちはマスクを売って儲かったのか?
杉本部長はデータを見ながら「ピーク時に1000枚のマスクを25万円で落札した案件がありますね」と教えてくれた。マスクの種類や仕入れルートによって、一概に原価は出しづらいが、マスクを仕入れたことがある人の話によると、不織布のマスク1枚の仕入価格は50枚で200円ぐらいだという。つまり1枚4円。4円で仕入れたマスクを250円で売れば、ボロ儲けといっていい。モラルが吹き飛んでしまう人の気持ちも分からない訳ではない。
「でも、そんなに儲からなかったと思いますよ。品薄になると仕入価格も上がりますし、商品がないから、ヤフオクから高値で仕入れて、アマゾンで売るような人もいますからね。ネット通販に不慣れな人はデータを見ないで転売するから、引き際も分からなくて、結局、不良在庫を抱えて大損するケースが多いんです」
今回はネット通販の相場価格を調査するツールを使ったことで、マスクの高額転売ブームが一時期的なものだと知ることができた。しかし、まだまだマスクは売れると信じ続けて、儲かったお金でさらに仕入れて、マスクを高値で売り続けている可能性は十分にある。
そう考えれば、高額転売している人たちは、高額で仕入れたマスクで儲けを出すために、異常な価格をつけるしかないのかもしれない。