「高額転売」は素人が簡単に手を出せる商売になった
取材後、2014年の鳥インフルエンザの際、マスクを大量に仕入れた経験のあるネット通販会社の社長から話を聞く機会があった。当時、どのくらいマスクで利益を出したのか聞いたところ、「全然儲からなかったよ」とため息交じりで答えてくれた。
「大量にマスクを仕入れたら調子よく6000万円ぐらい売れたんだ。でも、突然、売れなくなってね。結局、6000万円の在庫を抱えることになったよ」
このネット通販会社は5年がかりで在庫を売り続け、最後は施設に寄付して、ようやくマスクの在庫地獄から解放されたという。今回の新型肺炎でマスクを仕入れたか聞いたところ、「もうこりごりだよ」と苦笑いをしていた。
マスクを高額で転売している人は、実のところ、私たちのすぐそばにいる、ごくごく普通の人なのではないだろうか。先述した経営者のように失敗した経験のある人であれば、絶対に手を出さない商材だ。リサーチツールを使いこなす転売のプロでも、このように価格変動の激しい商材には手を出さないはずだ。
今回の取材をするまで、高額転売は根っからの大悪党のような人がやることだと思っていた。だが、素人が簡単に手を出せる商売になったことを考えると、普通の人のモラルそのものが崩壊しているのかもしれない。