「北千住駅のすぐ前を流れている荒川の正式名称は荒川放水路。つまり、あとから人工的に造られた河川なのです。現在の隅田川が、かつての荒川に該当します。徳川家康が1590年に江戸に入ったころは、利根川は東京湾に注いでおり、その河川水のせいで、江東区全域が湿地帯でした。現在の荒川付近は全体的に湿地で地盤が弱く、仮に荒川が決壊した場合は住宅地のほとんどが浸水するでしょう」

意外と安全? ベイエリアのタワマン

利根川流域全体が湿地だったため、江東五区(江東区、葛飾区、墨田区、江戸川区、足立区)は全体的に標高が1メートル未満のエリアが多く、特に江東区は大半が浸水被害リスクを抱えているという。

「仮に浸水被害が起きた場合、区民約260万人が避難することは現実的ではありません。対策として堤防を整備すると行政は謳っていますが、完成は50年以上先。こうした地盤のゆるさのわりに、不動産価格に大きな差が出ていないので注意しなければいけません」

一方、近年開発著しい豊洲や芝浦、晴海などの湾岸地域は意外にも「内水氾濫の可能性がゼロ」。これは幕張やみなとみらいも同様だ。

「もちろん、湾岸エリアは津波が起きた場合最初に被害を受けますが、すぐに水が海に逃げていくので浸水しないとされています。一方、多摩川や利根川流域は低地に水がいつまでもとどまり、数週間にわたって浸水被害が起きるリスクが高いです」

内陸に位置する場所でも、浸水被害が起きないとは言い切れない。

「大雨が降ったときは、相対的に低いエリアに水が集まります。地名にさんずいが入る場所は水害が起きやすいといいますが、代官山駅前や自由が丘駅も相対的に低地なため、水害発生時の浸水リスクを抱えています。こういった場合の水害は武蔵小杉で起きた内水氾濫ではなく、河川そのものなどが氾濫する『外水氾濫』になります」

水害のイメージがない、人気タワマンエリアの1つである西新宿も外水氾濫のリスクを抱える場所として数えられる。

「西新宿は周囲に比べて標高が低いのです。そのため、大雨が降ると、ここに水がたまってしまうのです」

都内から少し離れた埼玉県にも爆弾を抱えたエリアがある。

「埼京線と武蔵野線が走る武蔵浦和駅付近は、実は旧河道です。駅から大宮方面に北側に進んだ場所が台地です。また、一帯はもともと水田だったため、大雨時には液状化現象が起きるリスクもある。一方、同じくタワーマンションが立ち並ぶ川口駅前は、もともと自然堤防。昔から人が住める場所だったので、武蔵浦和よりはまだ被害は少ない。両地域の都心へのアクセス利便性はほぼ一緒ですが、自然災害発生時は大きな差が出るでしょう」

都心郊外の危険エリアはほかにもある。前述した旧利根川が走っていた場所は危険度が高い。