瞑想でマインドフルな状態を育てる
心を閉じて現実を感じなくなってしまったり、いろいろ考えて、その考えに呑み込まれて現実がわからなくなってしまったときには、現実に戻ってくるためにマインドフルネス瞑想が有効です。
マインドフルネス瞑想は、呼吸にともなう体の感覚に集中する瞑想(サマタ瞑想)から始めて、注意をパノラマ的に広げる観察瞑想(ヴィパッサナー瞑想)へ進めて行きます。私が紹介する瞑想法は、実践面、理論面でマインドフルネスに関わる様々な瞑想法を参照しながら、私自身の実践経験や指導経験などを踏まえて形にしたものです。
●背筋がすっと伸びて、その他の身体の力はすべて抜けている姿勢をとる(下腹に少し力が入る)
●呼吸に伴う身体の動きと感覚に静かに注意を向ける。
・呼吸は「ゆったりと」くらいにして、なるべくコントロールしない。
・お腹や胸の辺の動きに注意を向け、「ふくらみ、ふくらみ」「ちぢみ、ちぢみ」と、感覚をそのまま感じ取る。
・気づきが追随し、木の葉が風でそよいでいるように、身体がただ膨らんだり縮んだりしているといった感覚が生じることがある。
・雑念、五感、感情などに引き込まれていることに気づいたら、ラベリングをして(編集部注:気づいた対象を心のなかで言葉にすること。考え事であれば「雑念」、皮膚のかゆみであれば「かゆみ」など)そっと呼吸の感覚に戻ることを繰り返す。
●さらに注意をパノラマ的に広げて、気付きの対象になる私的・公的出来事のすべてを同時にとらえ続けるようにする。
マインドフルネスは、ありのままを感じることが目標です。呼吸に集中する練習ではありますが、なるべくありのままの呼吸を感じたいので、「呼吸をコントロールしない」のがポイントです。ゆっくり吸いたいときはゆっくり吸い、浅い呼吸のほうが体が楽だと感じたときは、浅い呼吸でいいのです。
混乱からわれに帰るために必要なこと
ものを考えているときというのは、夢を見ていてそこから抜け出せない状態と似ています。夢から覚めると「変な夢を見たな」と思うように、私たちが「ああ、締め切りが近いな」「あ、これまだやってなかった」「これもまだできていない」「あの人に連絡を取らなくちゃいけない、どうしよう」と考えごとで混乱しているときも、どこかでハッと気づきます。「私は今までだってそうだったしな」「何とかしてきたよな」「大丈夫だ」とハッと気づいて、ハッとわれに返る。これがマインドフルネスです。
マインドフルネスが実現したときに見ている、感じている自分を「観察者としての自己」といいます。