「この子にはゲームが必要」と母親が判断した理由とは?

すべて順調に進んだかのように見えるSくんの受験だが、母親はひとつだけ最後まで悩んだことがあるという。それは“ゲームとの付き合い方”だ。

Sくんは大のゲーム好き。受験の天王山と言われる「小6の夏休み」でも1日に2~3時間ゲームに費やす姿を見て、母親は胸中穏やかではいられなかったそうだ。

しかし、結果として最後までゲームは禁止しなかった。それはなぜか?

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母親は「この子からゲームを取り上げてはダメだと思っていました」と話す。5年生のとき、成績目標に達せずに欲しいゲームを買ってもらえなかったSくんの落ち込みようはひどかった。目に見えて元気がなくなったSくんを見て、母親は「この子にとってのゲームは、大人にとってのビールのようなものなんだな」と感じたという。

「大人だって仕事終わりのビールをご褒美にがんばることがありますよね。それと同じ、いえ子供ならなおさらご褒美が必要なんだと思ったんです。ご褒美もなしに勉強をひたすら頑張り続けるなんて難しいですよね」

受験が迫るなか、当のSくんも自分がゲームをやりすぎという自覚はあったと言う。ある日「ゲームに依存しちゃダメだけど、これ以外に気持ちが切り替えられる方法がないんだ」と泣いているSくんを目の前に、母親は胸がいっぱいになったという。周囲には、受験期はゲームを完全に封印する受験仲間もいる。やはり心を鬼にして、ウチもそうするべきかもしれない。両親はそうした葛藤に苦しむこともあった。

受験直前は母親も勉強の休憩時間に一緒にゲームを楽しんだ

何が正解かはわからなかった。

それで両親は結局どうしのたかといえば、驚くことに、直前期は母親も勉強の休憩時間に一緒にゲームを楽しむことにしたのだ。

それは、一緒にやることでSくんが罪悪感を持たずにゲームを楽しめると考えたから。禁止しないならば、逆にSくんがゲームをしている間は思う存分気分転換ができるように協力したのだ。母親は「私自身もゲームが直前期のストレス発散になっていました」と笑う。